ユリアーレ転生物語 (ページ35)

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第七話ノアのルームメイト捜しページ35

｢今回、救世主様は外れの農村で見つかったらしいけど、すぐに保護できた運の良い事例だ。救世主様が降り立っても、すぐに見つけられないこともあるからね｣
救世主としてこの世界に落ちてきた異界の人間が、悪人に捕らわれたり、事件に巻き込まれて見つからなかったり、そういうことも起こり得た、とナタンは言った。
ゆえに、この伝説は、一般には広く知らされていない。いざ救世主がこの世界に降り立った時、この伝説を悪用されることを恐れて。
｢しかしそのせいで、この伝説を知らない者に守護者の印が出た場合、ただの妙なアザと思われて名乗り出ないのだろう。もしくは救世主伝説を知っていても、何か理由があって本人が出てこないのかも｣
イラムール先生は書類を机に仕舞うと、頬杖(ほおづえ)をつき、続けた。
｢皇宮としては早く四人揃えて、救世主様をリシユル教国の “聖地” に送らねばならないんだけどねえ。救世主様がなかなか聖地に来ないから、あちらの大司教様はお怒りだとか｣
｢そっか。伝説上、救世主と四人の守護者が揃ったら、まず聖地に向かうことになっているのよね……｣
リシユル教国とは、ユリアーレ最大の宗教リシユル教の総本山にして “聖地” を守護する小国家だ。それは西の大国マフリンの首都の中にポツンと存在している。
そういえば、今日、ディール大聖堂でリシユル教国の偉い司教というのを見かけた。
もしかして、この件でセミナータ皇国を訪れたのだろうか……？
｢そろそろ皇宮は、救世主様とその守護者の存在を広く公表し、最後の守護者を見つけ出さなければならないだろうね｣
｢その……例えばの話だけど、守護者の印が出たとして、守護者になるのを拒否することはできるの？｣
｢できないね。それはもう世界規模の義務だし、王は勅命を出すだろう。逆らえば監獄行きだ。下手したら家族が人質に取られたりする｣
｢…………｣
リョウが連れていかれた日のことを思い出していた。
有無を言わさず連れていかれたリョウ。彼が何をどう思い、どう判断して運命を受け入れ、皇都へ向かったのか……私は何も知らない。
だけどもしかしたら、私や父、テネーブル家の皆の為でもあったのかな。
｢そもそも……なぜ救世主はこの世界にやって来るの？伝説では、混沌(こんとん)としたユリアーレを安定に導くってことだけど、そんなに混沌としてる？平和に思えるけど｣
私のこの言葉に、イラムール先生は苦笑した。