第七話 ノアのルームメイト捜し ページ27
クリスタルの壁から見える青い空と、水平線に沿う白い入道雲と、手前で咲く鮮やかな黄色のひまわりが、この年の夏を予感させる。
｢なあ、最後の班員は見つかったか｣
ノアが私達の作業の終わりを見計らい、愛想のない声で問う。
｢いいえ。色々声をかけてるんだけど、どこも班員が固まりつつあるから、望み薄っていうか。……まあ主に私が原因というか｣
そこでノアは、少し
｢一人……班員になってくれるかは分からないが、おそらくまだ誰にも声をかけられていない奴を知ってる｣
｢えっ、誰？｣
｢僕のルームメイトである、イライジャ･カリムだ。普段、あまり目立たないというか、気配を消しているというか、基本、根暗の引きこもりだ。だから知らない者が多いだろう。部屋でも静かだし。僕にとってはこれ以上ないルームメイトだ｣
｢はあ〜。なるほど｣
典型的な魔術師というわけね。
｢ねえ、根暗で引きこもりって、相当偏屈なんじゃ……｣
アリアの心配に対し、ノアは、
｢君の心配も分かるが、彼は単なる根暗ではないと思う｣
｢なんで？｣
｢まあ……見ればわかるだろう。二人とも、ついてきてくれ｣
彼はアトリエを出た。私もアリアも、よくわからないままついていく。
海風が気持ち良い中、クリスタルのアトリエ群を抜け、断崖の上の開けた場所に出た。
ノアが腕を掲げ口笛を吹くと、近くの林から雄の狼がやって来る。足音をほとんどたてずに走りながら。
｢わあ、近くで見るともっとカッコいい。名前はなんていうの？｣
｢名前は……オスカーだ。属性は【雷】｣
｢へえ｣
ノアは自分の足にじゃれついているオスカーの背中を撫で、再び放った。
すでに使い魔との信頼関係はできているよう。
｢どうやらイライジャ･カリムはもうすぐこの辺りに来るらしい｣
オスカーからの情報だろうか。
しばらくそこにいると、真下の静かな浜辺に、ある男子生徒が現れた。
例のイライジャ･カリムだ。魔術書を大事そうに抱えて、早足で歩いている。
スラッとした体形で、背も高い。銀髪の前髪を伸ばし、片目を隠している。涼しげな目元、顎の細い顔立ちで、これはモテそうだ。
｢なるほど、見た感じ本当に根暗っぽい｣
あれで実は運動ができるとかだったら、ギャップ萌えで高評価を受けそうなタイプではあるが……
｢あ、ルキア。女子生徒が来た｣
｢三年生の先輩よ。リボンが赤色だもの｣
｢あ、ルキア。告白されているみたい｣
｢ヤバい。これ以上は見てられない｣
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2019年12月19日 17時
