第六話 使い魔召喚の儀 ページ21
｢あれ、カラスの巣箱を作ってたのか？｣
｢そうよ。大きいのを作って快適に過ごしてもらいたいの。止まり木を作って、巣箱につければ完成｣
｢…………｣
アトリエの中を飛んでいたカラスが目の前の机に静かに下り立ち、
私が優しくカラスを撫でると、カラスも頭を擦り付けてくる。
ノア･フランチェスカが、私とカラスの行動をじーっと見てる……
｢……僕も手伝おうか｣
｢えっ？ 何を？｣
｢カラスの止まり木作り｣
｢ええっ!? い、いいわよ。あなたはあなたでやることがあったんでしょう？ 班に入ってもらえるだけでもありがたいわ！｣
｢いつの間にか、班員になることになってる……？ まあ、いいが。どうせ僕もどこかの班に入らなければと思っていた｣
｢よしっ！｣
私はガッツポーズ。一方ノア･フランチェスカは小さくため息をついて、自分の作業を中断し、作りかけの巣箱を見に行く。
｢結構、
｢これでも、ものづくりは得意なの。何もないところに住んでたから、自分で材料を取りに行って、何でも自分で作ってたの｣
主に星の森で手に入れたもので。
とは言え、止まり木は作ったことがないので、どうしようか考えていたところだ。
ノア･フランチェスカはそういうのが得意みたいで、工具と魔法を駆使し、売り物のごとく立派な止まり木を作ってくれた。
｢ありがとう、ノア･フランチェスカ！ あー……ねえ、フルネーム呼びも面倒だから、もうノアって呼んでもいい？｣
彼は数秒の無言の後、「構わない」とそっけなく答えた。
｢いい名前よね。箱船に乗っていそう｣
｢なに？｣
｢いえ、こっちの話｣
｢……君は｣
｢え？｣
｢君のことは、何と呼べばいい｣
ノアは私に向き直り、左右で色味の違う瞳で私を見つめながら、淡々と問う。
クールな調子とは裏腹に、その色があまりに情熱的で、何か予感めいたものを感じたが、
｢……っ、私のことは、ルキアと呼んで！｣
反動で弾けるように答え、改めて手を差し出した。
ちゃんと名を呼んでくれるつもりなのが、少し嬉しい。
ノアは、今度は私の手を、ちゃんと握ってくれたのだった。
｢アリア、聞いて！ 首席のあの子が私達の班に……ってあれ、いない｣
作ったばかりの巣箱を抱え女子寮に戻り、ルームメイトのアリアに今日のことを話そうと思ったのだけど、彼女はまだ部屋に戻っていなかった。
ただ、使い魔の火鷺ミアが、チーと鳴きながら私の足元にやってきた。
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2019年12月19日 17時
