第六話 使い魔召喚の儀 ページ15
｢対の属性を持つ子の召喚はとても珍しいんですよ。可愛がってあげなさい｣
そして先生は両手を叩き、「今日の授業はこれまで」と締めた。
こんな風に使い魔召喚の儀は無事に終わったが、生徒達はまだ私の使い魔をクスクス笑っている。そんなにカラスを召喚したことがおかしいのだろうか。
｢あれだけの大見栄を切っておきながら、テネーブル家も大したことありませんわね。“不吉” な使い魔を呼び出すなんて、ありえませんわ｣
ベアトリス･アキルがわざわざ私の横を通り過ぎ、聞こえるように嫌味を言った。
｢きっとベアトリス様の直後だったから、気圧されたのです｣
｢ベアトリス様こそ幸運の女神が微笑む、真の魔女に違いないわ！｣
取り巻き達がせっせと彼女を褒めちぎっている。無視、無視。
｢大丈夫？ ルキア｣
｢いいのよアリア。使い魔の格に頼っているようじゃ魔法は上達しないもの。それに見てよこの子。かわい〜｣
私は、私の腕の中におさまっているカラスをアリアと共に見つめた。
小さく丸まり、スヨスヨと眠っている。意外と寝顔はあどけない。
｢ルキアは、この子を残念に思ってないのね｣
｢当然よ。どんな子でも立派な使い魔に育てるのが真の魔術師よ。契約したからには責任を持って育てなきゃ｣
“不吉” の象徴と馬鹿にされようとも、私はただただ嬉しかったのだ。
自分の使い魔ができたこと。この子が、私の元に来てくれたことが。
｢あっ。そういえば、アリアの使い魔は同じ鳥よね。仲良くできるかしら？｣
｢大丈夫。ミアは優しい子だから、むしろ積極的に仲良くすると思うわ｣
そうだよ、とでも言うように、アリアの肩にのっているミアが珍しく「チー」と鳴いた。
その日はもう “使い魔召喚の儀” 以外の授業はなく、午後は自由時間だった。
アリアだけは希望性の異国出身者向けの講習会があるとかで、別の教室に行ってしまったけど。
私は早速、前世でカラスを世話していた記憶を頼りに、カラスを飼育する巣箱を用意しようと学校の工具店に木材を買いに行った。
女子寮長のスーザン先輩に聞いたのだが、島の外れに自由に使えるアトリエがあるみたいで、そこで巣箱を作ろうと思って。
｢おや、ルキア嬢｣
｢ユアン先生｣
工具店では、偶然、生物魔法学のユアン先生と出くわした。
ユアン先生はなぜかお菓子の棚の前で、チョコレートを見ていた。
｢最初の授業はどうでしたか。ルキア嬢はダブルエレメンツの子を召喚したけど、大丈夫そうですね｣
｢大丈夫……とは？｣
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作者名：オムとセナときどきパール | 作成日時：2019年12月19日 17時
