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ふーん、て。淡々と返した隊長につい瞬きしてしまう。反応が結構薄くてちょっとばかり拍子抜けだ。
「なんでィ、その鳩が豆鉄砲食らったみてェな顔」
「珍しく難しい比喩使って来ましたね……。じゃなくて、いや、反応薄いなぁ、みたいな……」
もうちょっとこう、反応があるものかと思っていた。隊長のことだから怖がりはしないだろうが、なんか普通過ぎる。
そんな私の心情を正確に読み取ったのだろう、隊長は「そんな驚くことでもねェだろィ」とあっさり返す。
「見た目がやべェ天人なんざもっといるし、目が変わるくれェ大したことねェだろィ」
「あー、まあ」
そう言われてみれば、確かにこのくらいは些細なものだった。思った以上にこの目を見られた事に過敏に反応していたのだと気付き、気の抜けた笑みが零れる。
隊長の私への見方が変わるかも、なんてほんの少しでも考えてしまっていたことが、なんだか馬鹿らしくて安心した。
再び背を向けて階段を登りだした隊長の背を追って、程なくして私達は狭い境内にたどり着いた。周囲は鬱蒼と木が茂り、虫の合唱が凄い。
まっすぐ社に向かう隊長が何をするのか首を傾げて見ていると。
「よっ……」
「なっ」
あろうことか、隊長は社の屋根の上に登ったのだ。それはもう何の遠慮もなく堂々と。
「何してんの罰当たり!」
「へーきだろィ、神様もこのくれェで腹立てる程心狭くねェよ」
「あんたは神罰下った話の絵本を読んだことないんかい!」
神様は割りとどうでもいいことで怒るぞ!?
思わず突っ込んだが、一応私は神罰が下るだなんて本気では思っていない。が、一応ありがたい物なのだから足蹴にされるのを見るのは良心が痛む。しかしだからと言って私にこいつを止められるかと言ったら、まぁ、経験上は不可能だ。
むぅ、と隊長を睨み上げていると何を思ったのか彼は無言で手を差し伸べてきた。手助けしてくれるらしいが、何だか癪に障る。ていうか罰当たりだっての。
なかなか動かない私に焦れたのか、
「おい早くしろィ。始まっちまうだろィ」
と隊長は催促してくる。けど、始まるって、何が?
疑問を覚えたが見上げた隊長の顔から退く気は窺えない。結局、少し迷ってから私は社殿に頭を下げ、それから跳躍して軽々と社殿の屋根の上に降り立った。
「……」
「ふふん、どうです?」
無言になった隊長に思いっきりドヤ顔してみせると、隊長は苛ついた顔でべしっと足を叩いてきた。暴力反対。
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霜夜華(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!受験お疲れ様です(^o^)頑張ります! (2019年2月17日 18時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
りん - お久しぶりです!受験でしばらく来れてなかったんですけど更新されてて…凄く嬉しいです!!読んでて進展しててドキドキしました!これからも応援しています。 (2019年2月17日 14時) (レス) id: 0f485d2f15 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 内田さん» おおお勢いのあるコメントありがとうございます!(*´∀`)頑張ります! (2019年1月18日 10時) (レス) id: af44df98e2 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - すごく好きです!!!!更新頑張ってください!! (2019年1月16日 18時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼちゃんさん» ありがとうございます!のろのろ更新ですが頑張ります! (2018年9月23日 20時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2018年1月8日 10時