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「そんな……。でも、だって……」
口から零れたのは、困惑と戸惑いに満ちあふれた、幼い子供のように情けない声だった。
ただ隊長から言われた言葉を、他の人に言われる時より純粋に嬉しく感じて、ただ胸が苦しくなっただけ。判断材料なんてたったそれっぽっちだ。
判断する基準だって、世間一般で言われているものに照らし合わせただけの、根拠も何もないものなのに。
なのに、「好きなのではないか」と問われると、何故かはっきり否定出来ない。以前銀さんに「沖田くんが気になってんだよ」と言われて、私がそれを異性の云々と勘違いした時は、「あり得ない」と否定出来たのに。
今は、そう言えない。天地神明に誓うことも出来ない。
勿論、疑いが消えた訳でもない。隊長に対して「好き」という思いを抱けているのか、実感が沸かないのも事実だ。
それを言えば、お妙さんは笑った。
「沖田さんに会えば、分かるんじゃないかしら。自分が相手に恋情を抱いているかどうか、という疑問を持った状態で直接会えば、そうなのかそうでないのか、そうだとすればどれくらいの度合いなのか、きっと分かると思うわ」
「そんな……。困るよ……」
「困る?どうして?とんでもない身分違いの恋とかならともかく、もし沖田さんを好きだったなら、叶わない訳がないと思うわよ。まぁ、仕事でうっかりあの世に逝かれる可能性は無きにしも非ずだけど」
私は答えられなかった。
だって私は、恋はしないと決めている。ただでさえあんな重たい約束をしてしまったのだ。この上、好きになんてなってしまっていたのだとしたら。
そうなのだとしたら、私はどれだけ、あの人に負担をかけてしまうのか。
――これ以上、巻き込んだらいけないのに。
知ってしまうのが怖い。隊長に会うのが怖い。
好きなのではないかという疑惑が間違いだったらいいのに。いや、そうでないと困る。
――困る、んだ。
「御免下せェ、姐御ー。沖田でさァ。うちの馬鹿医者モドキを回収しに来やしたー」
「ッッ!!!」
噂をすれば陰。
まさにその言葉通り、当の本人の声が玄関から聞こえて、私は思いっきりビクついた。
反対にお妙さんは、
「ほら、王子様が迎えにいらしたわよ?」
「おっ、王子様ってちょっと、お妙さん!?
って、あぁ待って無理無理無理、怖い待ってちょっと引っ張らないでほんと!」
と、キラキラとした笑顔のまま、怪力で以て私を玄関へと引っ張っていく。
誰か助けて下さい本当!
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霜夜華(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!受験お疲れ様です(^o^)頑張ります! (2019年2月17日 18時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
りん - お久しぶりです!受験でしばらく来れてなかったんですけど更新されてて…凄く嬉しいです!!読んでて進展しててドキドキしました!これからも応援しています。 (2019年2月17日 14時) (レス) id: 0f485d2f15 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 内田さん» おおお勢いのあるコメントありがとうございます!(*´∀`)頑張ります! (2019年1月18日 10時) (レス) id: af44df98e2 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - すごく好きです!!!!更新頑張ってください!! (2019年1月16日 18時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼちゃんさん» ありがとうございます!のろのろ更新ですが頑張ります! (2018年9月23日 20時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2018年1月8日 10時