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「出ていこうとかアホなこと考えてんじゃねェ、馬鹿女」
「ば、馬鹿って……」
いや、それより何で私の考えが分かったの、やっぱこいつエスパーか。
……いや、単純に私が顔に出やすいだけか……。
「でも、私、負担になりたくないし……」
「出てったら余計に危ねーだろィ。江戸から出たら志士からは逃げられるかもしれねェけど、例の野郎がお前を狙ってた場合、そいつからは逃げられねェかもしれねェ。
それに、俺との約束も果たされねェだろィ」
「それ、は……」
私は視線をさ迷わせた。
確かに、その通りだ。私がここを出たら、隊長との約束を破ってしまうことになる。
でも、だからって――……。
視線を落として黙り込んだ私を隊長は数秒間見つめていたが、やがて口を開いた。
「……さっき、自分に出来ることはねェかって聞いてたろィ」
「え……?いや、言いましたけど……」
急に話題が変わったのを怪訝に思いながら、私は再び隊長の顔を見上げる。
隊長はポーカーフェイスのまま、言った。
「なら、俺にお前を守らせろィ」
「…………え?」
守らせろ……?
意味がすぐに理解出来なくて、私は呆けた顔になる。
そんな私に、隊長は更に続けた。
「お前がもしここを出ていって、それでうっかり拐われたり殺されたりしちまったら、俺は絶対ェ後悔すらァ。そんなことで守れねェなんざ、真っ平でィ。
だから、俺の刀の届く範囲にいろィ。
これは、お前にしか出来ねェことでさァ」
「……っ」
――嬉しい。
負担をかけるのが申し訳ないはずなのに、隊長がそこまで言ってくれることが、どうしようもなく嬉しい。
「貴方って、人は……」
どうしてだろう。いつもはこの人の優しさに触れると胸が温かくなるだけなのに、今は、それだけじゃなくて、少し苦しい。
でもそれは辛いものではなくて、良いもののように思える。
何なんだろう、これ。
「……分かりました。出ていきません」
よく分からない疑問は一度しまい、隊長を見上げて宣言すると、彼は安心したような顔をした。
でも……、ただ守られてばっかりなんて嫌だ。
守るということは、傷付く可能性があるということ。彼はただの地球人だ。私とは違って、怪我がすぐに治る訳じゃないし、きっと私の血での治療は望まない。
だから、体術の稽古をしよう。
隊長が余計な戦いをしないですむように、強くなろう。
私だって、この人を守りたいから。
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霜夜華(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!受験お疲れ様です(^o^)頑張ります! (2019年2月17日 18時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
りん - お久しぶりです!受験でしばらく来れてなかったんですけど更新されてて…凄く嬉しいです!!読んでて進展しててドキドキしました!これからも応援しています。 (2019年2月17日 14時) (レス) id: 0f485d2f15 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 内田さん» おおお勢いのあるコメントありがとうございます!(*´∀`)頑張ります! (2019年1月18日 10時) (レス) id: af44df98e2 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - すごく好きです!!!!更新頑張ってください!! (2019年1月16日 18時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼちゃんさん» ありがとうございます!のろのろ更新ですが頑張ります! (2018年9月23日 20時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2018年1月8日 10時