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驚いて目を向けると、隊長の手が私の右手を握っていた。
それにさらに驚いて隊長の顔を見れば、深い赤色の瞳が私を見ていて。
「あ、あの。隊長?」
「何でィ」
「いや何って……。この手は何なんですかね」
隊長は目を前に向けると、「別にいいだろィ」と素っ気なく返した。
――そして。
「……一人で勝手に悩むんじゃねェ」
淡々と、そう言った。
はっとして顔を上げても、隊長は前を見たままで。
「俺だって、軽い気持ちであんな約束したつもりはねェんでィ。すぐにとは言わねェけど、抱え込むのだけはやめろ」
はっきりとして、それでいて思いやりがある優しい声に、私は少しの間言葉を返せなくて、視線を彷徨わせた。
それから、繋いだ手の握る力を強める。
「……はい」
やっぱり、この人は優しい人だ。
その優しさに甘えるのは何だか引け目を感じるのだが、それでも救われているのは確かで。
「ありがとう、ございます」
きゅう、と胸の奥が締め付けられるような感覚がして、自然と頬が緩んだ。
そして、ふと思う。
私は隊長に沢山救われているけれど、私は彼に何を返せてあげているんだろう。
私だけが貰ってばっかりで、隊長の助けにはなっていないんじゃないだろうか。
……それは、何だか嫌だ。
どうしてこんなことを思ったのかは分からない。
数少ない近い存在である隊長とは、フェアでいたいからなんだろうか。
よく分からないけど、私も隊長のために何かしてあげたい。
「隊長。私に出来ることって、何かありますか?」
「あ?」
藪から棒の質問に、隊長は少し目を瞬かせる。
「どうしたんでィ、急に」
「や、なんか……。特に深い意味は無いんですけど……」
何だか照れ臭くて、誤魔化すようにもごもごと答えると、「ふーん」と隊長は呟いた。
「んじゃ首輪、」
「そういうのは無し!」
まだ全部言ってねーだろィ、と不服そうに呟く隊長。
冗談じゃない。SM系は断固拒否だし、それに。
「それって他の人だって出来るじゃないですか。もっとこう、私にしか出来ない感じのことで何かないんですか」
「お前にしか出来ねェこと、ねィ……」
隊長は視線を斜め上に上げて考え込む。それから数秒後、私に視線を戻した。
「…屯所戻ってからな」
そう言ったきり、黙り込んでしまう。
…今更だけど、何かとんでもないこと頼まれたりしないよね?
先行きに不安を覚えながら、私は隊長と並んで帰ったのだった。
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霜夜華(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!受験お疲れ様です(^o^)頑張ります! (2019年2月17日 18時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
りん - お久しぶりです!受験でしばらく来れてなかったんですけど更新されてて…凄く嬉しいです!!読んでて進展しててドキドキしました!これからも応援しています。 (2019年2月17日 14時) (レス) id: 0f485d2f15 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 内田さん» おおお勢いのあるコメントありがとうございます!(*´∀`)頑張ります! (2019年1月18日 10時) (レス) id: af44df98e2 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - すごく好きです!!!!更新頑張ってください!! (2019年1月16日 18時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼちゃんさん» ありがとうございます!のろのろ更新ですが頑張ります! (2018年9月23日 20時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2018年1月8日 10時