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それから少しの間隊長は黙っていたが、ふと、
「……お前が志士に襲われた時に千本使ってたのって、これの応用だったりすんのかィ」
と、聞いてきた。思いがけない質問だったので、一瞬手が止まる。
「……まぁ、そうです。私に体術を教えてくれたのは父だったんですけど。私は女だからどうしても力は男に負けるので、それのカバーで。
多分、母が鍼やってるの見て思い付いたんでしょうね。私の知識と『目』を使ったら、相手の動きを止めるくらいは出来るだろう、って」
「ふーん……」
だから針全部、急所外してたんだな、と一人納得するように呟いた隊長には答えず、最後の鍼を刺す。
「じゃ、刺し終わったんで十分くらいそのままでいて下さいね」
「ん……。寝ていい?」
「どうぞお好きに」
今の内に片付けられる物は片付けとこう、と背を向けながら答えて数秒。すーっという規則正しい寝息が聞こえ始めた。
これやってる時に寝落ちというのはよくあることだから特に気にしはしない。が。
……上半身裸の男が女子部屋で寝てるって図は、中々に誤解を招きそうな感じではあるよね。背中に何本も鍼ぶっ刺さってるけど。
いつもは相手の部屋でやってるから、ちょっと変な気分だ。何でかは知らないが、隊長が私の部屋がいいとか言ってきたからそうしてるんだけれど。
っていうかマジで体たくましいんだけど。いや、当たり前なんだけど。
いつもの恰好じゃ全然そんな感じしないからギャップが……。
「……やばいやめとこ」
これ以上考えたらあかん。変態くさいぞ私。
羞恥で顔が熱くなるのを無視しつつ、時間を見ながら、出来るだけ音を立てないように道具を片付ける。
あと五分くらいか。
ちょっと暇なので、前も見たその観賞用になりそうな寝顔を眺める。言っておくが体ではない。体では。
ほんと顔はいいよなコイツ。
そう思ってから、いや、違うかと自分で否定する。
顔"も"いい。が正しいんだろうな、多分。
隊長はドSなのを除けば実はいい人だ。それに正直、私のことを話せた所為か、今までより一緒にいて気が楽な気がする。
何というか、普段無意識に張ってる気が緩むと言うか。
「……ちょっと前までは、ほんとに嫌いだったんだけどなぁ……」
一緒にいるのすら嫌だったし。本能的に拒絶してたし。
人生って本当何が起きるかよく分かんない。
あどけない寝顔に無意識に笑みを零しながら、ゆっくりと時間が流れていくのを感じた。
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霜夜華(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!受験お疲れ様です(^o^)頑張ります! (2019年2月17日 18時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
りん - お久しぶりです!受験でしばらく来れてなかったんですけど更新されてて…凄く嬉しいです!!読んでて進展しててドキドキしました!これからも応援しています。 (2019年2月17日 14時) (レス) id: 0f485d2f15 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 内田さん» おおお勢いのあるコメントありがとうございます!(*´∀`)頑張ります! (2019年1月18日 10時) (レス) id: af44df98e2 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - すごく好きです!!!!更新頑張ってください!! (2019年1月16日 18時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼちゃんさん» ありがとうございます!のろのろ更新ですが頑張ります! (2018年9月23日 20時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2018年1月8日 10時