第九十六話 ページ10
間もなく、竜巻のような風がやんだ。
ホモサピエンスが振り回していたあの大鎌を止めたのは、あの小さな鋭いナイフだった。
顔をゆがめ、物凄い力で動かそうとするホモサピエンスの腕には血管が浮かび上がっている。
どれほどの力を勇本先生が秘めているのかが手に取るようにわかる。
「どうしてわかったんですか？」
秀才が驚いたように質問をした。
「確かに最初は戸惑ったよ？しかし―――」
そこで一呼吸おいてから、勇本先生は言葉を放った。
「規則性がある。ということが分かりやすすぎる。そこをもっと工夫出来て、やっと技になるね」
「は、はい･･･」
ホモサピエンスが苦笑いを浮かべ、勇本先生はあの不気味な笑みを浮かべていた。
「さて、次は誰だい？」
「うッ･･･」
勇本先生の問いかけに、ヤンチャーハンが素直に焦る。ダラダラと汗をかき、目が泳いでいる。
まぁ、順番的にヤンチャーハンだろう。
「オネガイシマス･･･」
片言でガチガチに緊張しながら、手と足を同時に出す。
こいつ、ビビりすぎじゃね？ｗ
「いつでもいいよ？」
「うッ･･･」
ヤンチャーハンが顔をしかめながら、腕を回したり、軽く体操をする。
二刀を構えると、段々と顔つきが変わってきた。
段々と殺し屋モード･･･と言う感じの顔に変わっていく。
構えた二刀の右の方を地面にゆっくりと近づける。最初はゆっくりと、地面に近づくにつれて早くなっていく。
そうして、最後は思いっきり二刀を切りつけた。
振った剣が元の位置に戻る間もなく、ヤンチャーハンは走り出した。
そうして、ギャン、という刃がぶつかる音がする。
最初は、ヤンチャーハンと勇本先生がぶつかったのかと思ったが、違った。
さっき、ヤンチャーハンが振った刃の衝撃が、今になって校庭の端っこにある木に当たったのだ。
「な、嘘だろ！？」
「マジかよ、あいつ。やるじゃん」
ボンバーマンが驚き、声をあげる。
そう、ヤンチャーハンは衝撃波を使ったのだ。
ヤンチャーハンはある程度勇本先生と距離を取り、二刀を構える。
グッと、一歩後ろに踏み込んでから、二刀を同時に振った。
シュン、と物凄い風を切ると音がして、衝撃波が勇本先生に向かって飛んでいく。
勇本先生は少し驚きつつも、ナイフを構えた。
たったナイフ一本であの衝撃波に立ち向かおうというのだから、凄い。
しかし、ヤンチャーハンの攻撃はそれだけじゃなかった。
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