第九十五話 ページ9
「残念だったね」
「くッ・・・!」
つり目オネエ(笑)が苦しみに顔をゆがめる。
思わず、全員が息を呑んだ。誰もが想像を絶するような場面だ。
さっきまでは、有利とまではいかないが、互角に戦えていたはずだ。
しかし、今は勇本先生がつり目オネエ(笑)の喉元にナイフを当て、つり目オネエ(笑)は一歩も動けないでいる。
一瞬にして、勇本先生がつり目オネエ(笑)の後ろに回り込んだのだ。
「ここまでだ。君は頭脳面でも技術面でも伸びしろがある」
勇本先生がナイフをそっとおろす。
つり目オネエ(笑)の頬を冷や汗がツっと、伝っていった。
「君には自信がありすぎる。そこが君の弱点だよ」
図星をつかれたのか、つり目オネエ(笑)の顔が少し強張る。
足と腰につけているホルダーに銃をしまい、一礼して後ろにさがる。
「さて、次は・・・誰かな?」
勇本先生が不気味な笑みを浮かべながら、私たちを見る。
全員が顔を合わせ、チラリと目をやる。
「ホモサピエンスでしょ」
「なぁにぃ!?」
私の言葉に、ホモサピエンスが不満の声をあげた。
「はは、いつでもいいよ?」
勇本先生がナイフを構えるのを見て、ホモサピエンスも渋々大鎌を構える。
構えた途端、少し目の色が変わったように思う。
腕を前にゆっくり差し出し、鎌の刃を下にして両手で持つ。
ホモサピエンスが目を閉じてしばらく微動だに動かない。
不思議に思っていると、突如目を開け、勇本先生めがけて、一直線に走り出した。
「よッと!おらぁ!」
大鎌をブンブンとやたらめったらに振り回す。勇本先生は不意を突かれたのか、咄嗟に後ろに飛ぶ。
ナイフがホモサピエンスめがけて飛び回るものの、なぜか当たらず、奴はまったく動じない。
どういうことだ?なんで奴には――――。
そう考え、ふとなにかが見えてきた。
風だ。ホモサピエンスはねこみゅと同じように風を利用しているのだ。
大鎌だって、やたらめったら振っているんじゃない。きちんと規則性がある。竜巻のような風を起こし、ナイフを防いでいるのだ。
巻き起こる風の中、ホモサピエンスが少しずつ勇本先生に近づいていく。
しかし、そう甘くはなかった。
「規則さえわかれば簡単だよ」
そう放たれた言葉とともに、ホモサピエンスの大鎌が止まった。
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