第百八話 ページ23
「ッたく、そう簡単にさせるかっての！」
俺の作戦を読み取ったのか、帰野先生がこっちに向かって走って来る。
このままじゃ、俺の作戦が台無しだ。
急いで逃げようとするが、さすが殺し屋元トップレベル。足が速い！もうすぐ後ろまで来ていた。
「わぁん！」
半泣きになりながら、走ろうとしたとき、突然目の前の景色が回転した。
「へ？」
先生が突き出した拳が空を切り、シュッという音を立てる――という光景が目の前で起きた。
どうやら、足を滑らして転んだらしい。････ということは･･･？
「ここで運使っちゃったぁ！」
「残念だったなぁ」
帰野先生の超超いじわるぅな笑顔を見ながら、ハッと思いつく。
先生が拳を振り下ろそうとするのと同時に、叫ぶ。
「最初はぐー、じゃんけんぽん！」
「はぁ？」
先生が出したのは、拳なので当然ぐー。俺が出したのは、当然ぱー。
「勝った！」
「なにぃ？」
全員が驚いたように声を上げる。
「はっはっは！」
俺がそう笑った直後、空で一度ピカッと稲妻が走り、それと同時に雷が空から降って来る。
「ばか！」
先生は素早い身のこなしで、俺を抱きかかえ横に転がった。
雷は方向を変えず、さっきまで俺たちがいた場所へと落下した。落ちた後も少し地面に電気が走っていた。それほどに強かったのだとわかる。
「う、うへぇ、こぇ」
「これが現実の恐ろしさだな」
帰野先生にそう言われ、案外俺って強いのではないかと自分で思う。
そう思っていると、パッツンが少しひきつった顔で勇本先生を見た。
「ゆ、勇本先生･･･。も、もしかして･･･」
「先生組を倒せたのって･･･」
「て、天災が、初なんじゃあ･･･」
パッツン、ヤンチャーハン、孤高の狼の言葉に、さすがの勇本先生も鉄壁の笑顔を崩す。
「あ、あぁ･･･。そうだね、彼は無条件で進級だ」
「「「はぁぁぁ！？！？」」」
「せ、先生、どういうことですか！？」
バカの極が食い気味で帰野先生に聞く。
「進級試験の内容は、我々教師陣と戦うこと。そして、それに勝つことが合格条件だ」
「今までは、試験前に僕らに勝つ生徒なんていなかったから言ってなかったけど･･･」
「まさかこいつが、一番に合格するとはな」
おぉっと？まさかまさかの、まさかさまだよ！？
「ごめん、先に二年生になっとくわ☆」
「「「ふざけんなぁぁぁ！！！」」」
「てへぺろ☆」
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