第百一話 ページ16
カンッ。という音がし、秀才が一歩後ろに下がり、構えた。
どうやら帰野先生の力に耐えられなくなり、引いたようだ。
帰野先生は相も変わらず余裕そうに、少し口角を上げ、全てを見透かすかのような目で秀才を見ている。
秀才はというと、少しずつ帰野先生から距離を取り、策を練っている。
この場合だと、帰野先生に強行突破するのは危険だ。さっきみたいなバットと剣で抑え合うなんてのは、勝ち目がない。
ここはなにか遠距離で――――。
そう考えていると、あろうことか、あの秀才が帰野先生に向かって走り出した。
「な、あいつなにやってんの！？」
「秀才ならわかるだろ、ここは違うってこと」
ヤンチャーハンとボンバーマンが叫び、他のメンバーが頷く。
そうだ。あいつは技能がないものの、頭脳はある。なのになぜ？
その時だった。
秀才は構えている帰野先生よりも姿勢を低くし、剣をバットの下に滑り込ませた。
そして、帰野先生の手とバットとの部分をうまいこと狙い、バットを上に飛ばした。
その瞬間、帰野先生の懐に忍び込み、剣を首元へと走らせる。
「させるかっての！」
「なッ！？」
秀才の剣を避けるように、帰野先生が地面へと倒れこんだ。
それを見て、秀才は剣を帰野先生の腰元の地面へと刺した。
「これで、俺の勝ちじゃあないですか？先生」
息を切らしながら言う秀才に比べ、帰野先生はまったくもって、まだ余裕そうな表情を浮かべた。
「残念だったなぁ、秀才。もう少しで追いつけるぞ？･･････ここまで」
「え･･･？」
その場にいる、勇本先生以外の全員が口をポカンと開ける。これは完全に秀才の勝ちでは、と口を開きかけたその時。
上から物凄い音を立てて、なにかが落ちてきた。―――ちょうど、帰野先生と秀才の上に。
それを帰野先生は華麗な足技で軌道を変えた。
軌道を変えられたなにかは、そのまま地面に落ちる前に勇本先生が見事にキャッチした。
「あのままじゃ、お前の腰は砕けてるな」
「俺が上にはじいたバット･･･」
そう、その落ちてきた「なにか」とは、秀才が上にはじいた帰野先生のバットだったのだ。
だが、そこまで強くはじいていないであろうバットが、なぜそこまで長く空中に･･･？
「お前が上にはじくときに、少し力を加えさせてもらった」
「そ、そんなことまで･･･」
全員が唖然としていると、立ち上がった帰野先生がこっちを見てニヤリと笑った。
「さて、次は誰が来る？」
ば、バケモンだ。
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