第九十八話 ページ12
秀才の鈍は、勇本先生がどんな方向に逃げようが、ピッタリとついていうように追いかけていた。
つり目オネエ(笑)が手こずっていた弾の入れ替えもスムーズに行い、まるでそれを感じさせない。
勇本先生も、ここまでくっついてこられるのは想定外だったのか、少しやりにくそうにしている。
秀才の鈍は、ずっと勇本先生の足元を狙い、勇本先生はそれを華麗によけるも、少しずつバランスを崩し始めた。
それを待っていたかのように、秀才の鈍が畳みかける。
どんどんと距離を詰め、勇本先生に近づいていく。
勇本先生はそれを避けるように、後ろへ、後ろへと歩を進める。
しかし、後ろ歩きの勇本先生より、断然秀才の鈍の方が早く、二人の距離は一メートルほどになった。
勇本先生のナイフをさっと避け、秀才の鈍は銃の引き金を引いた――――と、思いきや、彼女は引かなかった。
一歩後ろに飛び、勇本先生と距離を取る。
二人の距離が三メートルほど空いた。
全員があっけにとられている中、秀才の鈍がニヤリと笑い、マシンガンのごとく、拳銃を撃ち始めた。
勇本先生にギリギリ当たるか、すれすれの状態でコントロールされている。
先生はというと、それをまるで軽やかにダンスを踊るように避けている。
「ここだ!」
秀才の鈍が思わず叫ぶ。その瞬間、勇本先生の懐に入り込み、わきの下あたりから、顔に向かって拳銃を向けた。
パンッ、という銃弾の音と、キンッ、という金属の音が、ほぼ同時にする。
「なッ・・・!」
「ふぅ・・・危なかったね」
地面にほとんど寝転ぶような格好で、秀才の鈍が目を見開く中、勇本先生が平然とした顔で息をついた。
なにがあったのか、瞬時に判断する。
今まで、秀才の鈍が勇本先生を追い込むように撃って行ってたのは、おそらく目くらましだ。
距離を詰めたのに、撃ち込まなかったのもそうだ。
どれもこれも、最後のこの、近距離で顔に撃ち込むためのフェイク。
だが、なんで勇本先生は防げたんだろう。
そう思っていると、張本人、勇本先生が説明してくれた。
「秀才の鈍、君の技は面白い。きちんと計算されていて、君の実力不足も補えている。しかし、だね。最後のつめが甘い」
「・・・どういう、ことですか?」
息を切らし、秀才の鈍が尋ねた。
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