【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【藤原貴子と恋バナ】 ページ4

「A、次それ取ってー。」

「はいはいっと。」

マネージャー室には、過去のスコアブックがたくさんある。
今日は、部活が終わってから貴子と一緒にそれらの整理をしていた。

「やれやれ、何とか終わったねー。」

最後の段ボール箱を貴子が棚にしまうのを見て、私はふぅ、と息をついた。

「貴子、けっこう遅くなっちゃったけど大丈夫？何なら送っていこうか？」

貴子はいたって普通の女の子だ。
一方で私はというと…空手有段者を、普通の女の子とは言うまい。

「ふふっ。Aが送ってくれたら確かに心強いね。」

「まぁ、私なんかより彼氏とかの方が、青春って感じがするんだろうけどさ…。」

と、そこまで言って、私は貴子から彼氏や好きな人の話を聞いたことがないのに気付いた。

「ねぇ、貴子ってさ…彼氏いないの？」

「えっ！？な、何？急に…。」

「いや、その手の話って、あんまり聞いたことないなぁ、と思って。」

「…彼氏は…い、いない、かな。」

「そっかー。貴子モテそうなのになー。…まぁでも、部活忙しいしね…。あっ、じゃあ、好きな人は？」

「っ！」

聞いた瞬間、貴子がカッと赤面した。
おっ！この反応はっ！

「いるんだっ！？えっ、誰誰誰！？私の知ってる人！？」

「…あ、あのね…」

「まさか、うちの部員！？哲とか純あたりじゃない！？」

「…その…」

「あっ、意表をついて亮介とか！？」

「…えっと…」

「もしかして年下！？うっそ、御幸とか！？」

「…あ…A…」

「えー、御幸はやめときなよー。確かに野球上手いしイケメンだけどさー。」

「A…。」

「あいつの性格は貴子と合わないよー。ってか、あいつに合う女の子っているのかなぁ。もうちょっと相手に思いやりをもって欲しいよねー。」

と、そこまで言った時。
貴子が、困った顔で私の後ろを指差した。

…イヤな予感がする…。

ギギギギギッと音がしそうなほどぎこちなく後ろを振り向いたら…

「ヒイイィィッ！み、御幸っ！」

「はっはっはっは。Aさん、俺の性格がどうかしましたか？」

「いや、その…何モイッテナイヨ？」

「ちょうど良かった。俺、これからティーやるんで、球出ししてください。」

むんず、と襟首を掴まれて、ずりずりと引きずられ始める。

「い、嫌だあぁっ！もう帰るー！」

「今日は帰しませんよ。」

「貴子ー！せめて倉持にしてー！」

「まだ言うか、この人は…。」

結局、それから暫く御幸の練習に付き合わされてしまった…。

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