小湊春市【結婚記念日】 ページ6
2月14日。
世間でバレンタインデーと呼ばれるこの日は、私達夫婦にとってはもう一つ大事な意味がある。
「ただいまー。」
ガチャッ、と玄関の鍵を開ける音とともに大好きな人の声が聞こえて、私はガバッとソファーから身を起こして玄関へ向かった。
「お帰りなさい…!早かったね!」
予想以上に早く帰ってきてくれたことが嬉しくて、エヘヘ、と笑いながら言うと、春市君は頬を赤らめながらポリポリと頬を掻く。
「うん、まぁ…今日は…ね。」
そのまま二人して意味もなくヘラッと笑い合ってから、と、とりあえず中入ろうか、ってことでリビングへ向かった。
受け取ったコートをハンガーにかけていると、春市君は持っていた紙袋の中を見ている。
「それ…今日貰ったヤツ…?」
「え?…あぁ、うん…一応…」
少し困り顔でそう答える春市君を見て、私は複雑な気持ちになった。
今日はバレンタインデーで。
カッコいい春市君は、そりゃチョコを貰うワケで。
ほとんど義理だとわかってるけど、もしかしたら本命も混ざってたりして…
…なんて、嫉妬とも不安とも言えないドロドロした嫌な気持ちで胸が苦しくなった時。
フッ、と春市君が柔らかく笑って、「A」と私を呼んだ。
「…え?何?」
「これ。」
そう言いながら、春市君はもう一つの紙袋から、白い箱を取り出した。
「開けてみて。」
テーブルの上に置かれたのは、よくスイーツのテイクアウトに使われる箱。
まさか…と思いながらそっと箱を開けてみると…
「…うわぁ…!」
出てきたのは、チョコレートでデコレーションされ、苺が飾られている立派なホールケーキ。
真ん中にはホワイトチョコでできたメッセージカードがあって、そこには
『Happy Anniversary!』
と書かれている。
「…凄い…!」
「良かった…喜んでくれて。」
呆然としながら呟くと、春市君が嬉しそうに微笑んだ。
「…あれ?で、でも、本来は私からチョコをあげる日で…!」
ハッと我に返り、慌てて準備していたチョコを取りに行こうとしたら、その前に春市君がポンポンと私の頭を軽く叩いた。
「いいんだよ。僕がAにあげたかったんだから。」
そのまま体を屈めて私の目を覗き込んで、綺麗な瞳を細めて春市君は続ける。
「バレンタインでもあるけど…今日は、僕とAが家族になった、大切な記念日だからね。」
春市君のその言葉は、私の胸に温かく…そして優しく広がっていった。
(枝野様リク)
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雪星(プロフ) - 出雲さん» 出雲様、返信が遅くなり申し訳ございません!今さらですが、リクエスト受けさせていただきます!御幸編と小湊兄弟編で分けて書かせていただきますね(>_<) (2018年1月23日 22時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 乙葉さん» 乙葉様、返信が遅くなり申し訳ございません!今さらですが、リクエスト受けさせていただきますのでもう少々お待ちくださいませ! (2018年1月23日 22時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
出雲 - いつも雪星様の作品、楽しく読ませていただいております。倒れた夢主を心配しまくる過保護な御幸と小湊兄弟のお話が読みたいです。難しいとは思いますがどうかよろしくお願い致します! (2017年12月13日 4時) (レス) id: 888639fabb (このIDを非表示/違反報告)
乙葉(プロフ) - リクエストお願いしたいんですけど・・・倉持くんが彼女をからかって返り討ちにされるというリクエストなんですけど・・・ちょっと難しいですかね!?できるならお願いします!! (2017年11月26日 17時) (レス) id: 0b1b7fbed3 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - 雪星さん» あわわわわヽ(;´Д`)ノごちそうさまでした笑いつき可愛すぎかよ!鳴ちゃん邪魔しにこなかったらどうなっていたのか…。ニヤニヤありがとうございます笑 (2017年11月22日 22時) (レス) id: 85da798f24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年2月4日 22時