【ダイヤのA】Colorful pieces《短編集》

伊佐敷純【顎髭と幼馴染】 ページ4

※伊佐敷視点
＿＿＿＿＿＿＿

高校三年の年末。
久々に実家に戻った一応受験生の俺は、部屋のベッドの上で受験生らしく雑誌を読んでいた。
…細かいことは気にすんな。

と、その時、コンコンコンとノック音が響いた。
ウチの家族がノックするなんて珍しいな…と思いながらチラッと視線だけドアへ向ける。
そして、続いて聞こえてきた声に、俺は思いっきり息を飲んだ。

「純くーん？私だけどー。」

「っ！？」

こ…この、声は…！

A！？

「帰ってきたって聞いたから、顔見に来たのー。入ってもいい？」

「んなっ、ちょ、待っ…！」

隣に住む一つ年上の幼馴染の声に、俺は慌てて読んでいた雑誌をバフッと枕の下に隠す。

へ、部屋、散らかって…！

つーか俺、普通にスウェットだっつーの…！

「お邪魔しまーす。」

ガチャッとドアを開けて入ってきたAは…前より大人っぽくなってるようで…。

「…な…何の用だよ…！」

「だからぁ、久しぶりに帰って来た幼馴染の顔見に来たんだってば。」

ふわっと笑いながらAは言い、懐かしいその笑顔に自然と鼓動が早くなる。

「…か、簡単に男の部屋に入ってくんじゃねーよ…！」

ベッドに座ったまま目を泳がせると、Aは眉を下げてクスッと笑う。

「大丈夫だよー。純くん以外の男の子の部屋には入らないから。」

…どーいう意味だよ…そりゃ…！

「…お、なんかまた逞しくなったねー。相変わらず顎髭生やしてるみたいだけど。」

「ほっとけ。」

「前から思ってたけど、どうして生やしてるの？」

「どうして、って…」

…そりゃ…

「…うるせーな、どうだっていいだろ。」

ふい、とAから顔を逸らして答える。


…言えるかよ…

見た目のハクをつけたい、なんて…

少しでも大人に見えるように、なんて…


Aは暫くきょとん、とした顔で瞬きをしてたけど、やがてまたふわっと柔らかい笑みを浮かべた。

「…うん、いいや。どんな理由にしろ、純くんがカッコいいってことに変わりはないもんね。」

「んなっ…！？」

バクン、と心臓が跳ねて、俺は思わずガバッとAへ顔を向ける。


…こ、こいつ…！

どーいうつもりなんだよ…！


「純くーん？どうしたの？」

「…なんでも…ねぇよ…！」

首を傾げるAに、俺は片手で顔を覆いながら絞り出すように答えた。


見てろよ…

大学生になったら…

お前に追い付いたら、度肝抜くような告白してやっからな！！


(ポキポキポッキー様リク)

小湊亮介【初恋結実】→←倉持洋一【敬語禁止令】

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