倉持洋一【敬語禁止令】 ページ3
「…あ、そーいやAさん、昨日の…」
「A『さん』?」
ピクッ、と片眉を上げて隣を歩く洋一を見上げると、洋一は『しまった』とばかりに顔をしかめて目を逸らした。
「二人でいる時は、敬語と『さん』付けはやめてって言ってるのにー。」
「すんません…でも、中々クセが抜けないんすよ…」
「あー、また敬語使ってるー!」
「あ…」
言い訳する洋一にすかさず指摘すると、困り顔でガリガリ頭を掻いていた。
一年前に入部してきた時から気になっていた洋一に告白されたのが、およそ一週間前。
付き合い始めてすぐに『二人の時は敬語と『さん』付け禁止』というお願い(命令)をしたんだけど…
この一年の間に、洋一の中では先輩と後輩という意識が染み付いてしまっていたらしく、私は中々呼び捨てで呼んでもらえずにいた。
「私はちゃんと洋一って呼んでるのに…」
「いや、だからクセが…それに、Aさんは年上…あ、ヤベ…」
「また『さん』つけるし!私が言ってることちゃんと聞いてる?」
ムスッと膨れてみせると、洋一は真っ赤になってワタワタと両手をバタつかせる。
「聞いてますって!…じゃねぇ、聞いてるって…」
「もういい。」
プイッと洋一から顔を背けて、私はスタスタと歩き始めた。
ワザとじゃないのはわかってるんだけどさー…。
やっぱ、さん付けや敬語は距離を感じちゃうじゃん…。
はぁ…とため息をついた、次の瞬間。
耳の横をフワッと風が流れた___と思ったら
洋一が、後ろから右腕を私の首に回して抱き寄せてた…。
「…よ…洋一…?」
「…もう少し…時間くんねぇ…?」
耳元で聞こえる洋一の声に、ドクン、と心臓が高鳴って顔に熱が集まる。
「…時間…て…?」
「…クセもあるけど…それ以上に照れ臭くてよ…」
物凄く言いにくそうにブツブツ言ってるのは、それが紛れもなく本心だからで…。
「今は…これで勘弁してくれ…A…」
絞り出すように囁かれた洋一の言葉のせいで、今まで以上にカッと顔が熱くなった。
「…なっ…ちょっ…急に…!反則…!」
「さん付けしないで、って言ったのはAさんっすよ?」
そう言うと、洋一はするりと腕を離したけど、そっぽを向くその顔はゆでダコみたいに真っ赤。
…あぁ…そうか…
面と向かって呼べないから、後ろから…
「…もうヤダ…洋一可愛い…」
「…うるさいっす…」
真っ赤な顔で眉間に皺を寄せる洋一は、やっぱり可愛かった。
(彩様リク)
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雪星(プロフ) - 出雲さん» 出雲様、返信が遅くなり申し訳ございません!今さらですが、リクエスト受けさせていただきます!御幸編と小湊兄弟編で分けて書かせていただきますね(>_<) (2018年1月23日 22時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 乙葉さん» 乙葉様、返信が遅くなり申し訳ございません!今さらですが、リクエスト受けさせていただきますのでもう少々お待ちくださいませ! (2018年1月23日 22時) (レス) id: 51d66f5e63 (このIDを非表示/違反報告)
出雲 - いつも雪星様の作品、楽しく読ませていただいております。倒れた夢主を心配しまくる過保護な御幸と小湊兄弟のお話が読みたいです。難しいとは思いますがどうかよろしくお願い致します! (2017年12月13日 4時) (レス) id: 888639fabb (このIDを非表示/違反報告)
乙葉(プロフ) - リクエストお願いしたいんですけど・・・倉持くんが彼女をからかって返り討ちにされるというリクエストなんですけど・・・ちょっと難しいですかね!?できるならお願いします!! (2017年11月26日 17時) (レス) id: 0b1b7fbed3 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - 雪星さん» あわわわわヽ(;´Д`)ノごちそうさまでした笑いつき可愛すぎかよ!鳴ちゃん邪魔しにこなかったらどうなっていたのか…。ニヤニヤありがとうございます笑 (2017年11月22日 22時) (レス) id: 85da798f24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年2月4日 22時