【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室６《短編集》

【小湊亮介と猫の名前】 ページ3

コンコン

「はーい。どうぞー。」

いつも通り、マネ室で課題と戦っていると、軽快なノック音が響いた。
ガチャッとドアを開いて顔を出したのは亮介で、首を傾げながら聞いてくる。

「ねぇA、アリスこっちに来てない？」

「アリス？…いや、来てないけど…？」

「そっか…今日はプーだけでさ。」

アリスとプーというのは、最近よく寮にやってくる野良猫で、誰かがつけた仮名が広がったらしい。

何ヵ所かエサ場をもっているらしいアリスとプーは、ここでも誰かに何かを貰えると学習したらしく、青心寮もエサ場の一つと認識されてしまったみたいだ。

「ふーん…ま、野良だし、そういうこともあるでしょ。…に、しても…」

ドサッとイスに背中を預けながら、私は前から気になっていたことを口にする。

「誰が付けたんだろーね、アリスとプーって名前。」

「あれ？知らなかったの？名付け親は沢村だよ。」

「え！？マジで！？」

予想外のその名前に、私は思わずガタッと立ち上がった。

「…凄い…意外…」

「まぁそうだよね。」

呆然としながら呟くと、珍しく亮介が素直に同意する。

「沢村に、そんなカワイイ名前つけるセンスがあったなんて…」

「…可愛い？」

「うん…だって、出所はディズニーじゃないの？アリスとプー…あれ、アリスは違うんだっけ？」

てっきりそうだと思ってたんだけど…。

すると、亮介がニッコリ笑いながら『真実』を告げた。

「なるほど、Aはフルネーム知らなかったのか。」

「…フルネーム？」

「うん。アリスとプーは略称で、フルネームは………アリストテレスとプラトン。」

「はあぁぁ！？まさかの哲学者！？」

「意外だよねぇ。賢そうだからってつけたみたいだけど。」

「…意外…過ぎる…！」

「でもちょっと堅すぎでしょ？俺ならもう少し力の抜けた自然体な感じの名前付けるけどな。」

顎に手を当てながら亮介が言い、私は沢村が哲学者の名前を知っていたという衝撃が抜けないながらも、亮介が付ける名前も気になって聞いてみた。

「…例えば？」

「ん〜…ゼンとハン、とか。」

「ゼンとハン…」

そんなに変な名前じゃないけど…
何か裏の意味がありそうな…

と、思っていると、亮介はニッコリと微笑んで続けた。

「ちなみにフルネームは、全裸(ぜんら)と半裸(はんら)。」

「自然体過ぎるでしょっ！」

「惜しむらくは、正しく言うと2匹とも全裸ってことかなぁ。」

「そういう問題じゃないっ！」

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