4.裏切り者 ページ3
〜アラナサイド〜
「裏切り者が見つかった?
それは本当なのかい、太宰君」
早朝。
首領の部屋へ呼ばれた。
何かあったのかと思って急ぎ足で首領の部屋に向かうものの、視界に入ったのは
ふぁぁ、と欠伸をする中也の姿。
ドアを開けた私が中也の姿を目にするのと同時に首領の携帯電話が着信音を奏で始める。
「え!?」
───そうして私の動揺する声が部屋に響いたのだ。
「…ああ、なるほど。
お手柄だったね、太宰君。
今から其方へ向かわせるとするよ」
ピッと音を鳴らした携帯をパタンと閉じた首領はふぅ、と溜め息に似た息をもらした。
首領は私達の方を向いたかと思うと口を開く。
「あぁ、急に呼んだのにすまなかったね。
要件を簡潔にまとめよう。
まず、昨日伝えた潜入捜査の件だが、中也君と中川君、2人だけで向かってもらうことだよ」
「…え!?」
思わず私の声がまた漏れる。
朝から首領に驚かされてばかりだ。
「はぁ!?首領、あの青鯖が行かないことに漉したことはないですが…」
「あぁ、異能力のことだろう?
君の『汚濁』と中川くんの『月夜の浜辺』
君たち二人の異能は、太宰君がいなければ止められないからね」
首領が言うことは正しい。
私の異能は一定回数以上使えば、何が起こるか検討もつかないし…中也の『汚濁』は、死ぬまであらゆるものを破壊し続ける。
そんな時に必要不可欠な存在が太宰さん。
彼の異能《人間失格》だけは
私たちの異能力を止められる。
それなのに何故首領は───
「実は私にも分からなくてね。
そこでだ、2つめの要件としよう。
太宰君のもとへ向かって欲しい。
理由は2つ。
一つ、太宰君に理由を聞くため、
二つ、今電話があったように『裏切り者』の正体が知れるためだ。」
首領は裏切り者が発生した事態に、何か解決策を考えているのだろうか。
「首領からは仰らないのですか?」
「あぁ、太宰君が直接君たちに伝えたいらしいからね」
太宰さんが、私たちに直接……
何故だろか、と考えるものの
その疑問は自分の中から吐き出されることはない。
「要件は以上だ」
「はっ、では…失礼します。首領」
「失礼します」
首領に深く頭を下げ、私たちは
エレベーターの方に足を運ばせる。
首領は険しいような顔をしていた、
現れた裏切り者に動揺を見せているのだろうか。
そんな彼が笑みを薄っすら浮かべているのに気づくことはなく、私たちは部屋を後にした。
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作者名:kana | 作成日時:2021年9月26日 10時