STORY.4 ページ4
翌朝。
「彩、あなたに贈り物よ。黒木君からみたい。」
え、なんだろ。
不思議に思いつつも、一階へ降りると、
『プリムラ・シュアリン』の花束を抱えたママの姿が
目に入った。
『プリムラ・シュアリン』の別名は『西洋桜草』。
テレビのドラマなんかで見たことがある。
確か、花言葉は…ーー『青春の喜びと悲しみ』、
『青春の恋』……だったはず。
……あ、そういうことだったんだ。
その瞬間、私は全てを悟ったんだ。
みんな、知ってたんだ……、私と翼の関係を。
だから、「KZ」を解散したんだね。
恋愛をしないという協定を決めたのは私だ。
発案者である私がそれを破ったんだから、「KZ」から
抜けようとする。
みんなは、そう考えたんだ、きっと。
実際に、私は抜ける決意を固めているところだった。
「KZ」の招集が後3日ほど遅ければ、私は自ら脱退を
切り出していただろう。
そうなる前に、みんなは動いたんだ。
私の『いきがい』を私自ら手放してしまわないように。
……みんな、酷いよ。
ズルいよ、そんなことするなんて……。
多分、言い出したのは若武だろう。
そして、若武が切り出したのは、自分にけじめをつける
ためだったんだろうな。
「KZ」はみんなにとっての大切な場所だったから、
若武はそのことを考えて、自分で言わないと、後から後悔
するって思ったんだ。
「KZ」のリーダーという華役を降りるのは、
目立ちたがり屋の若武からしたら、大変なことなのだろう。
それを私のために、あたかも私のせいじゃないみたいに、
やってのけたんだ。
本当に、すごいと思う。
『学校の都市伝説』の中で、黒木君が言ったこと、
本当だね。
若武はヒーローだって。
『他人のために自分を犠牲にできる人間』なんだって。
私のために、こんな簡単に「KZ」を解散しないでよ……。
どうしてそんなに、かっこいいことするの……?
みんなのこと、忘れられなくなっちゃうよ。
涙でぼやけた視界に、白い紙のようなものが映った。
「あれ……、なんだろ。」
手に取ってみると、それはメッセージカードだったんだ。
表には丁寧な文字で『アーヤへ』と書かれてあった。
二つ折りにされているそのカードを開くと、
『J'enverrai cette fleur en ami.(友達としてこの花を
貴方に)』
と記入されていた。
フランス語で書かれているのが黒木君らしいな。
ふっと笑みが溢れた後、私は『西洋桜草』のもう一つの
花言葉を思い出したんだ。
3人がお気に入り
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華花 - そんなことない。とっても面白かったよ!! (2023年1月9日 20時) (レス) @page8 id: e91cbbbf82 (このIDを非表示/違反報告)
いちいちか - あんまりだなーって感じです。これから頑張ってください!!!!!!(´・ω・`) (2022年8月19日 14時) (レス) @page6 id: 6983203fad (このIDを非表示/違反報告)
叶優 - 水無月歌乃@しばらく浮上無しさん» ありがとうございます! (2022年8月4日 18時) (レス) id: 551c9caaf5 (このIDを非表示/違反報告)
よや - OK (2022年8月3日 22時) (レス) id: bd8fc734b1 (このIDを非表示/違反報告)
叶優 - よやさん» はい。短編なので、これで完結です。……が、気が向いたら番外編も出そうかなって思ってます! (2022年8月3日 22時) (レス) @page5 id: 551c9caaf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:叶優 | 作成日時:2022年8月3日 19時