溺愛される鬼少女② (ページ30)

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強い子供ページ30

悲鳴嶼 side

・

「南無阿弥陀…」

「…柱の人ですか？」

私がAと出会ったのはAが鬼になる前だ。
階級が低い隊士たちが町に潜む鬼に次々にやられて柱である私が来た。

この時、生き残っていたのはAひとり。

「ああ。生き残りは君だけか…」

「…っはい」

目が見えなくとも分かる。
Aはボロボロだった。

「お姉ちゃん、この人だあれ」

そして、Aはひとりで何人もの人間を守っていた。

「すごく強い人！もう、大丈夫だからね」

そう子供に言い聞かせていた。
自分も子供だと言うのに少し大人びたように。

「私は悲鳴嶼だ。君は…」

「幸月Aです」

「A、今の状況を説明してくれ」

分裂することが出来る鬼がいる。
その鬼から人間を守っていた隊士たちは鬼に負けてしまい、Aひとりになった。

ひとりでは守備に撤退するしかなく、
攻撃ができない。

「まだ子供だと言うのに…頑張ったな」

「えへへ、悲鳴嶼さん。鬼をやっつけちゃいましょう！」

不思議な子だ。
子供は苦手だが、この子は何か違う気がした。

「後は私に任せておけ」

そのあと、すぐに鬼を倒した。
そしてAはふらふらしながらも町の人間に心配をかけまいと最後まで立ち続けた。

「…っあ」

「大丈夫か…」

町から出てしばらく歩いた時、ふらついたAを受け止めた。

「あはは、すみません…」

「なぜ、逃げなかった」

「え？」

子供はすぐに逃げる。
自分が良いように…

「子供なのに自分を犠牲にして…」

「関係ありませんよ。私は子供でも鬼殺隊です」

そう言って微笑んでいた。

「…そうか」

「いつか悲鳴嶼さんみたいになりたいです」

「それは無理だ」

「あ、今笑いましたね！？もうっ」

この子は違う。
信用してもいい私の仲間だと思った。

・

私はなぜ信じ切れなかったのか。
あの子は私たちを裏切ったりしない。

人間でありながら傷も簡単に治らないのを承知で人を守る子だ。

鬼になってからもそうだったではないか。

「すまない…A」

私を許してくれ。