【FHQ】荒野往く旅路【影山飛雄】 (ページ38)

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「で、まあ、うろちょろしてるモンスターを晩メシにしたりしながらなんとか生きてた」

逞しいことこの上ない。アレか、私達には手の届かない場所にいるんだこの人。

「今日は、ちょっと移動しようかなと思ってよ。適当に進んでたら、突然地響きなんかするからびっくりしたな」

「はぁ……」

「何だ何だと見にいったら、アイツがいて人が倒れてるし。まさかAとは思わなかったけど」

それで飛び出してぶっ倒してしまった、と。

いやお陰で助かったのは事実ですけど。なんかツッコミ所が多すぎて追いつかないのはたぶん気のせいじゃない。

それでだ。岩泉さんは話を切り換えた。

「お前ら、及川のとこ行くんだろ」

「何でわかったんですか!?」

「何となく分かる。じゃなきゃあんなデッカいの出てこねぇしな」

……ごもっともです。

岩泉さんは、と影山さんが尋ねた。どうするんですか、と。

影山さんの「どうする」は、だいたい範囲が限られている。それを、相手がちゃんと理解してくれているのなら問題はないのだけど。

でも、そんなこと今は関係ない。

「城のこと知ってる奴は多い方がいいだろ」

岩泉さんは、ただ淡々として述べた。

「それに、森にいて思ったけど一度及川の泣きっ面拝みたいしな」

「……その節は大変なご苦労を」

「ああ、まったくだ」

岩ちゃん！と叫ぶあの人の声が頭の中で再生されて、思わず顔をしかめた。

「……どうしたのA、具合悪い？」

「いや……問題ないですけど」

「そう……」

研磨さんのフードが風で飛ばされて、私も思わず頭を抑える。

直後に襲ってきた突風に、周りの木がガサガサと揺れる。誰もが驚いて荷物や服を押さえた。

日向さんの驚く声がする。

「大王様って天気とか操れんの!?」

「そういう問題じゃないと思う……」

「いや、あながち間違ってないかもしれねぇな」

「ホントですか!?」

「本気を出したら一体何するか……」

「…………」

現れて、部下を置いて、手下を増やして――刹那の勢いであっという間にこの地を支配した大王。

わかりやすいくせして何を考えているかわからない。それでもまだ、城に居て、彼の言うことを聞いているだけのときはよかったけれど。

左足が、再び痛んだ。

もし、神様がいるなら。

この運命も――操っては、くれないですか。

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