06 ページ36
*
「まだ痛むか」
「若干……」
「そうか」
淡々とした影山さんの声が、すぐそばで聞こえる。
歩く以前に立つことさえ辛かった私の足。あーどうしよう、とへたれていると、影山さんが荷物を降ろして私の目の前に背中を向けて片膝をついた。
どうしたんですか影山さん、ときょとんとしていると、いいから荷物降ろしておぶわれろと荒っぽい声で彼はいった。
おぶわれろ、って一体なんのことかすぐにはわからなかったけど、……おんぶだなんて、すごく久しぶりだった。
「歩けねえんだからこうするしかねえだろ」
まるで当たり前、というように。
私達の荷物は青根さんが持ってくれている。影山さんの肩に掴まって、私はぎゅっと肩を縮めていた。
「……影山さん」
「なんだ」
「影山さんのマントっていい生地でしょ」
「知らねえよ」
問答無用で構いたくなる。あー、としっかりしているけれど柔らかい布に顔を埋めた。
道の脇からひょっこりと研磨さんが姿を現したのは、そのすぐ後だった。終わったの？ と尋ねてくるので、研磨ぁ！ と日向さんが憤る。
「何で先に行っちゃうんだよ！」
「いや、だって……追いかけられるの怖いし」
「魔法で何とかできなかったのかよ!?」
「無理、やだ」
無理とやだって矛盾してる気がするけど、と考えていると、研磨さんは影山さんと私を見てぎょっとした。
「……どうしたの、それ」
「Aが転んで足捻った」
「…………」
「そう！ 研磨、Aの足冷やしたいんだけどこの辺川って流れてたっけ？」
日向さんのたんこぶと同じ要領で、と彼の言葉を補足すると、「……ついてきて」と研磨さんはローブを翻した。
そこから数メートル。見えてきた細い川に安堵して、思わず息を吐いた。それに、みんなあれだけ走ったんだから喉も渇いている。
「何で研磨知ってんの？」
「さっきここ通った時に見つけたから、覚えといた」
「おれたちが走ってる時に!?」
また文句を言いそうな日向さんを先制して、研磨さんは私に言った。
「治療するから、早く」
こくり、と頷いた。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年8月1日 18時
