05 ページ35
*
「岩泉さん!?」
影山さんの声がして、ハッと我に返った。ガシャンと甲冑が音を立て、彼も驚いた顔で声を出す。
「影山!? それにAも、どうしてここに」
「岩泉さんこそどうしてこんな、」
言いかけて、あ、と口ごもる影山さん。すると、岩泉さんはまたガシャンと甲冑を鳴らし――肩の上に、昔から重そうな剣をかける。
「いい。気にすんな」
「でも――」
「過ぎたことだからな」
小さく笑うと、で、とほぼ真下にいる私を見下ろす。
……あ。今更やばい。
「Aお前、足大丈夫かよ？」
……じゃないと思い、ます。
*
「立てるか？」
「さあ……」
私の横にしゃがみこんだ影山さんに、まるで他人事のように返す。とりあえずブーツ脱げ、わかってますよと手をかけた。
ロングブーツをゆっくりと脱いで、靴下代わりの布の履物をぴらりとめくる。
案の定、捻ったと思われる場所は赤く腫れていた。
「……あーあ、怪我しちゃった……」
「お前な、転んで足捻るとか子供かよ」
「まだ子供だからいいんですぅ。冷やせばまあ、何とかなるんじゃないですか……」
威勢は張ったものの、途中で弱腰になって声が小さくなる。はあ、と影山さんのため息。
……心配、してくれてるのかな。
大きな怪我の度に怒鳴られた。でもそれは彼なりの心配なんじゃないかと、勝手に解釈してたけど。
今こうして訊いてくれていることが、何よりもその証拠、だと、思いたい。
でもちょっと子供扱いみたいで癪だ、と考えていたら、「Aーー!!」と日向さんが叫びながら走って来た。振り返ると青根さんもいる。
「大丈夫か!? 本っ当にごめん!! おれどうしたらいいかわかんなくて、」
「大丈夫ですから!! それにほら、もういなくなったんですし」
「そ、そっか――」
顔をあげた日向さんと、岩泉さんの目が合う。その後ろで青根さんも首を傾げていて、日向さんは私と影山さんの顔を見た。
「……えっと……この人……？」
「紹介は後でいいだろ」
「へっ？」
きょとんとする日向さんに、岩泉さんは言った。
「とにかく、今はAの手当てが大事だからな」
痛みはひりひりと、止まることを知らなかった。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年8月1日 18時
