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「私、白魔術は文献で少しかじったんです」
「へえ……でも城にいたんでしょ？」
「城っていっても、大王様の部下と従えるモンスターがいるだけじゃないんです。文献とか……好きな人がいて。滅びた村からもらってくるんです」
正確には奪って、ですけど。と付け足す。
「それが好きで、よく読んでました。お陰で身についた知識も多くて、助かってるんですけど」
「……でも、読んだだけじゃ使えるようにはならない。生まれながらのものだから」
「そうなんですよねー。だからへええと思って読んでただけです。白魔導士にも、会ったことはありませんでしたし」
まあ今すぐ横にいるけど、と思いながら言うと、少し間が空いて「……ねぇ」研磨さんが呟いた。
何だろう、と思って視線を向けると、こっちの顔をじっと見てくる。
「……なんかついてますか」
「そうじゃなくて。それ……敬語ってクセなの？」
「あー……」
ちょっとやりづらい、と言う研磨さん。申し訳なく思いながら答える。
「クセっていうか、ついというか。身について取れないんです」
「……そうなんだ」
「幼い頃からずっとこれなので。だからすみません、慣れてください」
「……わかった」
ならよかった、ホッとしながら前に向き直ると。
ゴツン、と影山さんの背中に思いきりぶつかった。……いったぁ!!
「ちょっと影山さん、急に立ち止まらないでくださ――影山さん!?」
返事がない。あれ？ 見上げると、影山さんはとある方向に首ごと視線を向けていた。そういえば、隣で研磨さんも同じように日向さんにぶつかっている。
前を歩いていた二人は――同じ方向に顔を向けていた。
「何、どうしたの……」
額をこすりながらの研磨さんの問いに、ようやく日向さんが腕を上げた。
「あれ」
指差す先。少し開けたところに生えている、一本の大きな木。
その上に――埋まるようにして、小さな鳥が引っかかっていた。
「ピィ」
小さな声で、鳴いていた。
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作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年8月1日 18時
