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*
たぶん影山さんは、日向さんに諦めさせようとしていたんだと思う。
「お前一人がのこのこ行ったところで、すぐに及川さんの手下にやられる。いらない倒され方したいなら、とっとと自分の村に帰れ」
「手下ってそんなにつえーの？」
「当たり前だ。だって――」
だって。
影山さんはそこで口を閉ざす。だって何だよ！ と口を尖らせる日向さんのうしろで、私は荷物の紐をぎゅっと握っていた。
だって。
だってそれは、城の警備は。影山さんが、かつて従えていた師団の仕事だから。
あいつらが弱いわけない――そうやって、きっと昔なら言えたんだと思う。
でもそれは、昔だから。
追放されて、影山さんは、……もう、そうやって言えないのだ。
「とにかく！ やめとけ、俺は言ったからな」
影山さんは、日向さんに諦めさせようとしていたんだと思う。
でも、影山さん。……それは、大きな見当違いです。
「うおお！ すっげー！」
「…………は？」
「やっぱ大王様なだけあるな！ その大王様を倒せたら、それすっげえワクワクしない!?」
「何言って、」
「二人とも、これから何か目的とかあるのか？」
目を輝かせた日向さんは、ぶんぶん首を振って左右にいる私達を見た。何言ってるんだこいつ、と言いたそうな影山さんの顔。
……だって、自分で勇者とか言っちゃうんですから。そんなこと忠告したって、逆に燃えるに決まってるじゃないですか。
「もし予定とかないならさ、」
勇者は、ひときわ大きな声で言った。
「おれといっしょに来てくれよ！」
*
*
「……及川さんを倒すって、」
影山さんは声を荒げた。
「そんなの無茶に決まってんだろ！ だいたいお前そんなんで本当に戦えんのかよ!?」
「それはこれからレベルアップする！」
「ふざけんなよ……」
座り込む影山さんに、私は自然に歩み寄っていた。
*
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作者名：スマトラ島のラフレシア | 作成日時：2016年8月1日 18時
