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「……修行中、です」
そして、部屋の片隅に置かれている、私達の荷物に視線を送る。
「俺達は……北の方にいる弓の師匠のところの弟子なんスけど、師匠から二人で修行してこいって放り出されて」
「…………」
「でも、途中で色々あって飢えてました。ありがとうございます、助かりました」
また、軽く頭を下げる影山さん。
影山さんのアドリブ力に拍手を送りたかった。時々頭がよくなるのは気のせいだろうか。全部に説明と理由をつけてしまうなんて。本当にこの人天才だ。
それで、村の人達の警戒も解けたらしい。さっきよりも落ち着いた、和んだ空気が部屋中に広がる。
うまく誤魔化せたようだ。後で、細かいところは二人で打ち合わせした方がいいか?
飲め飲めと注がれる酒に弱いんですと断っていると、お代わりを運びに舞さんがやって来た。
目が合って、ホッとしたような笑みを浮かべる。
「よかった。ちゃんと食べられるね」
「はい! どの料理も美味しいです!」
「ありがと。あ、これお代わりね。遠慮しないで食べて!」
涙が出そうだった。ああ、生きているって最高だ。さっきは天国だとかほざいてごめんなさい。
「影山さんは地獄なんかじゃないですよ……」
「何言ってんだお前」
「あ、そうだ」
思い出したような声が重なる。何だろうと思って見ると、舞さんは思い出したように言った。
「まだ、名前聞いてなかったよね。何て言うの?」
「あ、はい。えっと……」
さっと影山さんと目配せする。影山さんはきょとんとした顔で頷いた。
……駄目だ、やめとこ。それにさっきお互いのこと呼んでたっけ。
「Aです。で、こちらは兄弟子の影山さんっ」
兄弟子、と言った途端足を踏んづけられたが笑顔で持ちこたえる。
そっか、と舞さんは軽く頷いた。
「私は舞。で、こちらが……」
「鎌先だ」
「俺は笹谷な」
金髪の人と、その隣の人。鎌先さんに笹谷さん……よし、覚えた。
すると、さっきの小柄な男の子が大きなお盆を持って小走りでやってきた。
「舞さんっ、向こうのテーブル片付けましょうか?」
「あっ、ありがとう。えーと、こちらが作並くん、さっくんね」
「よろしくお願いします!」
笑顔がかわいい。二人はどうやらこの宿屋で働いているみたいだった。なんだか姉と弟みたいで微笑ましい。
*
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年8月1日 18時