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「――じゃあ、その……インターハイが終わったら、引退されるんですか」
わたしが聞き返すと、鎌先さんは「まあな」と軽く頷いた。
また別の週。同じように店を訪れた鎌先さんと、少し違うように会話が進み。――予期せず、彼がバレーボール部だということを知った。
けれど、彼はもう三年生で、インターハイが終わったら引退する予定らしい。
「それは、ちょっと寂しいですね」
「今までだってずっとそうだったしな。早いとこ後輩に譲ってやるんだよ」
って茂庭が言ってた、と照れ隠しのように付け足す。もにわ、さんの名前はこの前聞いた気がする。同級生だったんだ。
「あ……、でも、中学生も次の大会が終われば引退ですから。一緒なんでしょうかね」
「残る奴らもいるけどな。部活入ってんのか?」
「帰宅部です。文化部少ないし、運動苦手なので」
だからこうしてアルバイトを、と言いかけたところでふと留まる。
鎌先さんは何か考えるような顔をしていて、呑気に付け足すことは憚られた。……そういえば、普通に会話を続けていたけど。
もしかして、引き留めたら悪かったかな。
「なあ」
心臓の音が聞こえた。はい、と緊張しながら返事をして。
けれど、その続きは。
「ずっと気になってんだけど、もしかして○○中か?」
「あっ……。はい」
「やっぱり。そのセーラーだもんな」
言われて思わずすそを引っ張った。今日は先生に引き留められて帰るのが遅くなり、厳しいお母さんのことだから減給とか普通にありそう、と思って制服の上に割烹着を着ていたのだ。
でも、どうして? と思ったら、意外なことを言われた。
「俺もそこだったから」
「そうなんですか? あ、じゃあ家も近所……?」
「家は西側、あっちの方だ」
指差す西側。わたしの頭の中に地図が広がる。
伊達工業の場所、中学校の場所、その校区の西側、そしてこの店の場所。
どう考えても、ここに寄るのは遠回りだ。学校帰りに寄り道、なんて簡単なルートじゃない。
「あの、」
どうして寄ってくれるんですか、そう訊こうとして、……不意に留まる。
なんとなく、次の話題に取っておきたいと思った。それに結構時間も経っているし、お母さんが呼びにくるのもそろそろだ。
だから。
「今日、お団子が余ってるんです。よかったらどうですか」
鎌先さんはちょっと笑って、「商売上手だな」と、三色団子も追加で買っていってくれた。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 北海道産のトラさん» そんな感謝される程のことではありません……ありがとうございます! (2016年10月1日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
北海道産のトラ(プロフ) - 良く書けていて凄いと思いました!この作品を書いてくださりありがとうございます (2016年9月30日 23時) (レス) id: cbf7b05fce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年6月30日 18時