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学校は伊達工業だと知った。次に気になったのは、部活のこと。
ジャージだったから運動部だと思う。……というか、鎌先さんが文化部な姿はあまり想像できない。いや、そうだったらそれはそれでいいんだけど。
店番の暇な時間、ずっとそればかり考えていた。扉が開けば、考え事はシャボン玉のようにパチンと消えて、レジを打って、扉が閉まればまた戻る。
何の競技だろう、って考えた。そんな、鎌先さんのことだから気になるとかじゃなくて。ただの興味だと思う、多分。
それだけのことが、妙に楽しかった。
*
「お姉ちゃん、楽しそうだね」
「へっ?」
不意を突かれて思わず素っ頓狂な声を出してしまった。慌てて顔を上げたわたしを見て、にっこりと笑う。
「な、なんで?」
「だって、楽しそうだよ」
再びそう言う彼女の名前は、みこちゃんという。
本名は美也子ちゃんだけど、気がついたら「みこちゃん」になっていた。
みこちゃんは、わたしも通っていた小学校の五年生。しっかりした子で、近くの病院におばあちゃんが検査入院する度にお見舞いの和菓子を買っていく。
しっかりした女の子、っていうのは大抵鋭い。小学生の子相手にドキドキしながら、中学三年のわたしは懸命に取り繕う。
「ま、まあ、そう、かな?」
……違う。全然取り繕えてないから。
「お姉ちゃん、つまんなさそうだったわけじゃないけど。最近楽しそうに見えるよ」
「……そう?」
「うん。いいことあったの?」
いいこと、だったのかもしれない。余計に緊張するのも、鼓動が速いのも、つい頬が緩むのも、きっとそのせい。
「どうして」なのかはわからないけれど、少なくとも、それは嫌じゃないんだ。
「みこちゃん、おばあちゃんのこと好き?」
「うん、好き!」
「……そっかあ」
今日は、おばあちゃんの好きなもなか。――白あんでなくて、粒あんのだけど。
「そんな感じ、だと思うよ」
どう言っていいかわからないまま答えると、みこちゃんは一瞬首を傾げてから、嬉しそうな声を出した。
「お姉ちゃん、好きな人いるの?」
「ちょ、ちょっと、そういうんじゃなくて!」
「Aー、これ追加のお団子……どうしたの顔真っ赤よ」
「お、お母さん!?」
みこちゃんも奥から出てきたお母さんも、そろってハテナを浮かべてた。
……わたしが一番「なんで?」って聞きたいのに。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 北海道産のトラさん» そんな感謝される程のことではありません……ありがとうございます! (2016年10月1日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
北海道産のトラ(プロフ) - 良く書けていて凄いと思いました!この作品を書いてくださりありがとうございます (2016年9月30日 23時) (レス) id: cbf7b05fce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年6月30日 18時