【ハイキュー!!】会へらくもおのづから【鎌先靖志】 (ページ18)

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*

翌日。

扉が開いて顔を見せた彼は、すぐに目を丸くしていた。

その様子が少しおかしくて、思わず笑ってしまいながら、わたしは言う。

「いらっしゃいませ」

*

「白あんの3個？別にいいけど、どうして」

「色々あるの！とにかく、絶対だから、お願いね！」

少々強引だったわたしの頼みも、お母さんは首を傾げながら「まあいいけど」と了承してくれた。

あと、それから。

「明日っ、明日もシフト入れていい!?」

「次から次へとどうしたの今日は」

「いいから!!」

うちの娘わけわかんないわ、とぼやかれながらそちらもOKをもらえた。よし、と心の中でガッツポーズした昨日。

だから――だから私は、今日ここにいる。

*

「……水曜って手伝いしてんだ？」

まだ状況を飲み込めていないらしい彼はそう言う。いつもは違うんですけどね、と前置きしてから、用意してあった紙袋を渡す。

「今日だけ、特別です」

だって、約束は守らないと。

一瞬きょとんとしてから、「……そうだな」という相槌。もう、今日はこれを渡すだけで終わってしまうけど。

それでもいい、と思った。"それだけ"なことが、きっと大事なんだ。

「……あ、そういや」

「はい？」

彼が口を開いたことに驚いて顔をあげると、どことなく照れ臭そうに笑っていた。

そういや、ともう一度言ってから、こんなことを聞かれた。

「……昨日はうっかり名前呼ばれちまったけど」

「あ」

そういえばそうだ。鎌先さん、とつい呼んでいた。

さぞかしびっくりされただろうなと思ってきたら、続く言葉は意外なもので。

「こんなこと聞くのも変だろうけどよ。……そろそろ、名前聞いてもいいか？」

出逢いはすべて偶然だから。

それは、どんなこともどんな人もそうなんだ。全部が全部、それで繋がっている。

自(おのづか)ら導いた出逢いが、それを大きく変えていく。

「…………もがみや、」

呟く声が、わたしの新しい一歩。

「――和菓子本舗『もがみや』、最上屋Aです」

会へらくもおのづから。

fin.