【ハイキュー!!】会へらくもおのづから【鎌先靖志】 (ページ17)

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みこちゃんはてててっとお店の中に入ってきて、レジにいるわたしを見上げた。

大好きなおばあちゃんの元に、お見舞いに行く直前の、キラキラした顔。

咄嗟には声が出なかった。

「――あのね、みこちゃん」

「なに？」

みこちゃんが、がっかりする顔を見たくなかった。

でも、……でも、言わなきゃならない。そう決意して、短く息を吸って、首を傾げる彼女に向かう。

「っ、ごめんなさい」

「え？」

「もなか、今日……売り切れちゃったの。白あんだけじゃなくて、全部……午前の間に」

「あ……」

優しい甘さのお菓子を、大切に食べてくれる人が大好きだ。

だからこそ、本当に、それでがっかりして欲しくなかった。

みこちゃんは理解してから俯いて、「……そっかあ」と諦めた顔になる。

「売り切れだったら、しょうがないね」

「……ごめんね……」

「だいじょうぶ！おばあちゃん、他のお菓子も好きだから――」

だから今日は、と並んでいるお菓子を見ようとしたみこちゃん。

思わずぎゅっと唇を噛んだわたしの目の前を、……ふと、影が横切った。

「……え」

みこちゃんもびっくりしていた。でも、

でも、みこちゃんの前に屈み込んだ鎌先さんは、笑っていた。

「え、」

「これ」

そう言って、提げていた紙袋を目の前に掲げる。

「白あんもなかの3個入り。だから持ってけ」

ぽかんとするみこちゃんに、続けて言う。

「あ、ちゃんと代金はお姉さんに払っとけよ。それで取り引き成立だ」

「えっ、……あ」

「ホラ」

流れで紙袋を受け取ったみこちゃんは、まだ戸惑ったまま鎌先さんのことを見上げる。彼は既に立ち上がっていて、普通に外に向かおうとしていた。

っ、待って！

「鎌先さん！いいんですか、」

「あー、俺は別に平気だからよ。でも見舞いは今日なんだろ？」

「でもっ！」

お金は、とレジを開けた。けれど、

ぽん、と優しく頭を撫でられた。え、と急に緊張する。

彼は、少しいたずらっぽく笑っていた。

「明日」

「……、」

「明日、一箱ちゃんと取っといてくれよ？」

言うなり手は離れて、それからぱたんと扉が閉まった。

*

みこちゃんが会計を済ませて出て行ってから、わたしは一目散に奥へ駆け込んでいた。

足音にびっくりしてこちらを見るお母さんに、迷わずに言う。

「――お母さん、明日もなか一箱とっといて！」

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