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*
翌週、火曜日。
チャイムと同時に教室を飛び出してきた(くらいの気分だ)。大急ぎで帰って、裏の玄関を開けて――
「お母さんっ!」
お母さんは居間で伝票の確認をしていた。わたしと目が合って、それで――
お母さんは目を細めて笑った。
「……いいわよ。今はお父さんに変わってもらってるけど、」
「すぐ行く!!」
「あちょっと」
言いかけたのも聞かずに階段を上がった。自分の部屋で手早く着替えて、鏡で少し整えて。
……ようやく。ようやくだ。
「よしっ」
小さく気合いを入れて、わたしは階段を降りた。
*
「ありがとうございましたー」
言い終わると同時に扉が閉まって、お客さんが出て行った。ふう、と久しぶりにつく安堵のため息。
一週間は長かった。先週まったくお店に出られなかったせいか、覚えているはずの作業にもまごつく。駄目だな。感覚、はやく取り戻さなきゃ。
お菓子の箱が並んでいる棚を見遣った。
白あんもなか3個入り、残り三箱。
今日は火曜日だから、きっと内村さんのところが後でまとめて買っていく。だから、その前に、来てくれたら――
そこまで考えてかぶりを振った。今日だとは限らない。まだ一週間ははじまったばかり。
そういえば、お母さんに「手が空いていたら店の前掃いといて」と言われていたのを思い出した。レジの前でぼーっとしていても手持ち無沙汰で落ち着かないしと、いつかみたいに箒を持って店を出る。
扉を開けて、外の空気を軽く吸って。
落ち葉がしつこく貼っついているコンクリートを一瞥した時、すぐ横から声がした。
「あ」
……え?
何も考えずに横を向いた。本当に何も考えていなかった。だからただ、ぎゅと箒の柄の部分を握ることしかできなかった。
「……久し振り、だな?」
何故か疑問形で、少しやりづらそうに口を開いた彼は、鎌先さんで。
ねえお母さん、偶然ってこのことをいうのかな。
それなら少し、期待しちゃうよ。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 北海道産のトラさん» そんな感謝される程のことではありません……ありがとうございます! (2016年10月1日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
北海道産のトラ(プロフ) - 良く書けていて凄いと思いました!この作品を書いてくださりありがとうございます (2016年9月30日 23時) (レス) id: cbf7b05fce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年6月30日 18時