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雨は割と好きだった。そりゃあ、前髪は鬱陶しくなるし、じめじめするけど、好きだった。
でも――まさかあんなに、一瞬で雨が嫌いになることなんて、あるんだね。
*
「っお願い! ど〜っしても、どうしてもAの力が必要なの!!」
「そんな大袈裟な……」
放課後。友人からの申し出に、正直困っていたわたしは、窓から見える曇り空に視線を逸らした。
なんでも、委員会の仕事で、今日締め切りなのにまだ終わっていないらしいのだけど。
「でも、昨日の今日言われたわけじゃないんでしょ? 〆切までまだあるって時に、言われたんでしょ?」
「うえ〜……Aがお母さんみたいなこと言う……」
「正直に言いなさい。昨日の夜、何してたの」
友人は言いにくそうに俯いた後、何故か苦しそうに呟いた。
言い訳をだ。
「…………観てた」
「え?」
「テレビ観てた! 観てましたはい!!」
「ほら……」
それで仕事なんかすっかり忘れてたんでしょ。Aが厳しいと何故かわたしが悪い扱い。
頼む前に自分でなんとかしようよ……。
「わたし今日、店番あるんだけど……」
「お願い! 時間は取らせないから! 今度お礼するから!!」
「…………」
「この通り!!」
がばっと頭を下げられて、押しに弱いわたしは、……つい、断れなかった。
でも、この時ばかりは断るべきだったのだ。もしくは、作業中なっくんの話しかしなかった彼女に、わたしはもう少し冷たくあるべきだった。
*
「……うわあ、」
玄関から外に出て、空を見上げて。つい出たのはそんな感想だった。
雨。酷い雨。いつの間にか曇り空は雨空になっていて、どしゃ降りが容赦なく地面を人を襲っていた。
友人は「本っっ当にありがとう!!」と言って、あとは部活に行った。卓球部だから天気は関係ないんだろうけど、いやそれにしても。
悪い予感。は、的中していた。
いつも鞄にいれてあるはずの、折りたたみ傘がない。そうだ、この間出掛けた時に別のバッグに入れたままだ。
タイミングよく傘を貸してくれるような、素敵な人も現れる気配がなく。
今日は火曜日。だから、あまりうかうかしていると減給、……あるかなぁ。
大丈夫、かな。
さほど遠くない家まで、少しくらいなら濡れたって構わない。
そう思って、わたしは歩き出した。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 北海道産のトラさん» そんな感謝される程のことではありません……ありがとうございます! (2016年10月1日 21時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
北海道産のトラ(プロフ) - 良く書けていて凄いと思いました!この作品を書いてくださりありがとうございます (2016年9月30日 23時) (レス) id: cbf7b05fce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年6月30日 18時