【ハイキュー!!】会へらくもおのづから【鎌先靖志】 (ページ2)

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わたし、最上屋Aの実家は『もがみや』という和菓子屋である。

二階建ての一階、表が店で裏が作業場。お父さんとお母さん、そしてお祖父ちゃんが毎日和菓子を作っている。

そんな店のことを、「手伝ってみない？」とお母さんに言われたのは、中3になってからだった。

週二日のアルバイト。ちゃんとお小遣いあげるから、と言われて選んだのは、塾のない火曜日と金曜日だった。

最初は慣れなかった接客とレジ打ちも、幼い頃からお母さんの姿を見ていたからかすぐに身についた。習うより慣れろ、ってこのことかな。

そういうわけで、決まった時間に店に立つのだけど――わたしは少し、気にしていることがある。

商店街から少し離れた和菓子屋のお客さんは、近所のおじいちゃんとか、近くに支社がある会社の人とか、あとは、入院しているおばあちゃんへのお見舞いとして買いに来る小学生とか。

だけどまさか、高校生のお兄さんが毎週来るとは思わないでしょう？

そう。『毎週のように来る』のだ。3個入りの白あんもなかだけを求めて。

最初はどうだったか覚えていないけれど、あれ？と思った時にはどうやらずっと来ていたらしい。

……そして、今日も。

「もなかの3個入りで」

淡々とそれだけ述べて、あとは財布を出すだけ。今日はちゃんと箱を取れた。

代金のやりとりをしてから、機械的な動作でレジを閉める。「ありがとうございました」――そうやって、いつもと同じようにしようと思っていたのに。

わたしが顔を上げても、彼はまだいた。……え？

戸惑っていたら、目が合った。

「この店って、個人でやってんだよな？」

「え、あ、そうですけど……」

「ふうん……」

いけない。動揺しすぎだ。

悟られないように小さく咳払いをして、わたしは人当たりの良さそうな笑みを浮かべる。

「両親と祖父でやっています。……それが、どうかしましたか？」

「……いや、」

ただの素朴な疑問だろうって、そう思っていた。

けれど、……けれど。

「いつ買っても同じように旨いから。ありがとな、店番頑張れよ」

「は、はぁ……」

「じゃあな」

ポカンとするわたしの前で、扉を開けかけていた彼が一瞬立ち止まる。

振り返ってまた目が合ったかと思ったら、にかっと笑った。

「また、来るよ」

ありがとうございました。――弱い声で呟いたのは、扉が閉まったずっと後。

それから、彼の笑顔はわたしの頭の中から離れない。

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