約束──22 ページ22
「ッ!!」
──「刀解」。
それは抱えきれなくなった刀たちの顕現を解き、せめて資材に還元させてもらうことだ。
…でも、あの人が言っているのはそうじゃない。
『刀壊』なんだ。
審神者自らの霊力で五虎退の本体に直接霊力を注ぎ込むから、刀解と違って意思や痛覚をもったまま死んでいく。
「だめっ!そんなの、やだよ……っ!!」
「っ、乱兄さっ」
「うぁぁあああああっ!!」
「!!」
ガキンッ、
乱心したボクの一撃は、審神者の結界により防がれる。
しかし予想外の行動に対して出来合いでつくったそれは、点滅しながらゆらゆらと数秒揺蕩って消えた。
「っくそ、僕が玩具なんかに……っ」
今ならこの人は冷静さを欠いている。
やるしかないんだ。
ボクが、この手で……っ!
「たあああああああああっ!」
「やめろ、っ!」
……ぼたり。
二つの音が重なり合う。
一つは、その人間の腕を切り落とした音。
もう一つは……
ボクの腹部からドクドクと流れる血が床に滴る音。
「………は、はは、ふっ、あははははは!!! 僕の腕と引き換えに、乱チャンは玩具以下になったんだ……ざまぁないねっ」
どさっ
一気に体の力が抜けて、その場に崩れ落ちる。
「兄さんっ、乱兄さんっ!!」
「っはは、キミもこいつも、すぐ刀懐してあげるよぉ〜」
あるじさんはボクに向かって斬り落とされていない左手をかざした。
ボクの周りに禍々しい赤黒い光が広がっていく。
…ごめんね、五虎退。
薬研にぃも、いちにぃも、他のみんなもみんな…。
しかし思わず目を瞑ったボクに振ってきたのは、イラついたような舌打ちだった。
「チッ……これ以上霊力を使えば僕が危ないか……まぁいい。その傷じゃあキミはもう放っておいても死ぬ。…はっ、はぁっ…あはははは!!!」
声が遠く聞こえるのは、あの人が部屋を出ていったからだろうか。
それとも、ボクがもうじき死んでしまうからだろうか。
「まって、くださいっ…」
「五、虎退……」
嗚呼、ボクの刃生って、所詮こんなものだったのかな。
「いやですっ、おねがい……!!」
「ごめ、…んね…」
ボクの心臓の音だろうか。余りにも早い音が響いてくる。
いや、これは足音かなぁ。
「叫び声が聞こえたがどうしっ……!!」
…あ、薬研にぃだ。
ずっとボクたちを支えてくれた、聞き慣れた声。
……安心するなぁ。
こんな状況だというのに、心は穏やかみたいだ。
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作者名：茜月 | 作成日時：2022年4月8日 16時
