約束──20 ページ20
＿＿可愛くないボクには、なんの意味があるのか
なんて、また考えちゃう。
いちにぃたちは、そんなことないよ、大切な兄弟だよって言ってくれてるけど、それはやっぱりボク自身じゃない。
「兄弟」。
それは、一人じゃ成立しない。
誰かと誰かの魂の絆が繋がりあって、初めて成り立つ特別なもの。
…じゃあ、兄弟がいなくなったら？
このままずっとこの生活を送っていくとしても、もしこの地獄から抜け出すことができたとしても、その日々は決して永遠ってわけじゃないから。
兄弟の繋がりが、消えてなくなるそのいつか。
「その時、ボクは一体何になれるの……？」
「……乱。…大将が、用があるって…」
後ろから耳に馴染んだ声が聞こえて、振り返る。
声の主はやっぱり、薬研にぃだった。
「……薬研にぃ…。…わかった！！今行くねっ」
「……ああ」
不安そうに揺れる瞳を諭すようにウィンクをして、その場に薬研にぃを残したまま軽やかなスキップで審神者部屋へと向かう。
……何か言いたげなその表情から、目を背けるようにして。
「………さっきの、聞かれちゃったかな」
そう呟いて見上げた先は、真っ赤に熟れた柿のような大きくて丸い太陽が丁度、とっぷりと彼方の霞に消えていくところだった。
ああ、やっと陽が落ちる。
ボクは少しだけ安堵した。
…あるじさんは、夜がとっても弱い人だ。
日没から一刻も経たないうちに床につくからその分朝は早いけれど、夜は、ボクたちにとって一握りの平和の時間。
だから、日が暮れるのを見ると少しだけ、気分が晴れる。
でもなんだか、誰にも止めることのできないお日様が煌々と燃えて沈み行く様はまるでボクたちのようで、同時に言いようのない不安も覚えてしまう。
この本丸が堕ちてゆく時、
沈みゆくその先には、何があるんだろう。
……もう、誰にも止められないのなら…。
ボク達に残された時間がもう残りわずかであるのなら……。
せめて、せめてそれまでは、笑顔でいよう。
本丸のみんながその時まで希望を絶やさずいられるように、ボクがみんなを照らす陽になろう。
もう一度満面の笑顔を作り直して、ボクは審神者部屋の襖を開けた。
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作者名：茜月 | 作成日時：2022年4月8日 16時
