約束──15 ページ15
そのようにして全員の自己紹介が済んだ。
だが、一人一人が短く名乗っていっても百振り以上はいるため、自己紹介だけでも一苦労だった。
これから先、苦労が増えそうだなとAは少し気が重くなりながらも、「今日は解散だ」と皆に告げた。
一気にがらんと広くなった部屋に佇んだ彼女は、直後、薬研のもとへ向かおうとした。
しかし山姥切国広とこんのすけを庭に待たせていることを思い出し、薬研に後で手入れをするという旨を伝えてからそっと庭に出た。
少し歩いて、彼らと話した場所へ行く。
すると木の陰に、こんのすけを肩にのせながらそわそわと顔をあちらこちらに向けている山姥切がいた。
こちらに気づいていないようだったので、Aは声を掛ける。
「山姥切……と、にゃんのすけ。」
「こんのすけですｯ!!」
こんのすけがすかさずつっこむが相変わらずAは気にせず歩み寄る。
「山姥切…」
「あ、あんた…」
二人の瞳がかちあう。
彼の視線は、ゆっくりと上へ向いていき──。
「山姥切…」
Aはその響きを確認するように、再度その名を呼ぶ。
「あんた……」
「その頭、どうしたんだ!?」
感動の瞬間、と思ったのもつかの間で、山姥切はありえないという目で彼女を見る。
「血まみれじゃないか!大丈夫なのか?」
「ん?あぁ、そういえば刺されたんだったな」
「刺された……!?」
Aは全く忘れていたというふうに髪をかきあげる。
しかし山姥切はそうでもないようで、さぁーっと顔を青ざめた。
「やはり俺がついてたほうが良かったか……」
「いや、失敗したわけではないのだ。寧ろそのことについては順調だ」
「はぁ?」
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作者名：茜月 | 作成日時：2022年4月8日 16時
