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「夢じゃない」
「夢だよ。現実のはずがないんだから」
男は、たまらなくなって悪魔の手を掴みました。自分よりも大きなその手を、包み込むように、強く。
ぎゅっと握った手からは、男よりも少し速く打つ脈が伝わってきました。
「お前にはやさしい生き物の血が流れてる。俺にはわかる」
男は強い目をして言いました。悪魔は心臓がどくんと鳴るのを感じました。
「やさしいのはあなただ、」
悪魔は男がどうしてここまで自分に対して必死になってくれるのかわかりませんでした。
怪我の手当てをしたというだけの事で、人間から嫌われている自分の側にいてくれるなんてありえない。自ら犠牲になるようなもので、もしかしたらそれは死んでしまうよりも辛いことかもしれないのに。悪魔はそんな風に思っていました。
俯いてしまった悪魔に、男はやわらかな声で話を続けます。
「お前は人間に傷付けられるのが嫌で閉じこもってるわけじゃないだろ。人間を怖がらせるくらいなら自分が孤独に耐えることを選んだんだろ」
男の言う通りでした。悪魔は自分がお城に閉じこもることで人間たちが平穏に暮らせるなら、そうするのが一番いいと思っていました。
どんなに歩み寄ろうとしても、どんなに誠意を見せても、誤解を解くことは出来なかったから。ただひとり原因である自分が、人間たちの前に現れなかったらそれだけで誰も怖い思いをすることがなくなるのだから。
「俺のせいで人間が毎日怯えて暮らさなきゃいけないのは可哀想だから」
「お前だって傷付けられたのに、どうして、」
男の声は震えていました。憤り、悲しみ、胸の痛みはそれまで生きてきて経験したことのないほどのものでした。
ただの噂で悪魔を忌み嫌い傷付けてきた人間たちを許せない。ただの噂だけで。真実を誰も確かめようとすらしなかった。男は、やりきれない気持ちで歯を食いしばりました。
「どうしてだろうね。でも俺のせいで誰かがつらい思いをするのは嫌だから」
ぽつりと悪魔が放り投げた言葉に、男は考えを巡らせます。やさしい悪魔の、そのやさしさを自分に向けることは出来ないか、と。
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7oh(プロフ) - タルトコさん» タルトコさん、コメントありがとうございます！幸せな気持ちになってもらえてよかった…！こういうのどうなんだろうとか、個人的には好きな世界観だけどこれまでのを読んでくれている人には刺さるのかどうかとかちょっと悩んだりしましたｗこちらこそありがとうですよ！ (2020年7月13日 1時) (
レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
タルトコ(プロフ) - こんばんは。恐れられる程の美貌でありながら無垢な心を持つ悪魔の可愛らしさ！悪魔だけれど天使のようなその笑顔に男は心が温かくなり、その温かい眼差しで悪魔は幸せを感じて…と素敵な無限ループを想像しつつ眠れる私もまた幸せです。ありがとうございました。 (2020年7月12日 2時) (レス) id: 276045d76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：7oh
| 作成日時：2020年7月11日 19時
