7 ページ7
国語科の準備室に入るのは初めてだった。専門書がずらっと並ぶ壁、教師用の机に折り重なるファイル、プリント、本。紙の匂い。奥の角にある机が先生の席らしくそこに案内された。
何の気なしに見れば他の席と同じくファイルだとか紙類が、それでも几帳面に並んでいた。ペン立てには黒と赤と青のボールペン、何色かの蛍光ペン、定規、カッターなんかが刺さっていて作業をするのであろうスペースは整頓されていた。
ど真ん中には閉じたノートパソコンがあって、きっとこの先生は壁紙をデフォルトのままにしてるタイプだなーとか考えていたらどこからか持ってこられた丸椅子が、先生の椅子の隣に置かれた。
「これ使って良いよ」
「どうも」
「紅茶好き？」
「え？」
「僕が飲むから、そのついで」
好きか嫌いか俺が答える前に、先生は自分のマグカップと俺用と思しき紙コップにティーバッグを入れて壁際の給湯スペースにあるポットのお湯を注いだ。
「砂糖とミルク使うならどうぞ」
「ねえ、なんで俺にこんな事すんの？」
授業でしか声を聞いたこともない俺に。週に何度かの授業しか接点のない俺に、どうしてここまでするのか全くわからなかった。
「ごめんね、二宮君と話してたの聞こえちゃったんだ。五限サボるっていうの」
「あぁ…いや、そんだけで俺のこと囲おうとか思わないっしょ」
先生は一瞬きょとんとして、すぐに笑った。
「囲う、囲うか、そうか。じゃあ僕も共犯だ」
後でわかった事だけど、このとき先生は俺が何か悩みを抱えているために五限は教室にいたくないんだと思っていたらしい。でも帰らないということは六限は出るつもりでいる。五限の科目が原因か担当教師が原因か、そんなところだろうと。だからそれなら、自分しかいない準備室で約一時間過ごさせてあげようと思っていた、らしい。
進学校だからか割と生徒の精神面のケアに過敏な学校だったし、教師たちは何か抱えていそうな生徒を見たら声をかけるように指導されていたんだそうだ。
ちなみに話の流れで真相を伝えたところ「随分と詩的な理由だ」と感心されたのを今でもよく覚えてる。いや教師ならそこ叱るとこだろって。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 316人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
7oh(プロフ) - 薫さん、おはようございます！読んでいただきありがとうございます。褒めてもらえてうれしいです！ありがたきハピネスです！！葉山先生より少し色がある、っていうのグッときました。先生側の話もお楽しみに！ (2019年7月1日 8時) (
レス) id: c7b4c0e1dc (このIDを非表示/違反報告)
薫(プロフ) - 7ohさんこんばんは！いっきに読んでしまいました。翔くんの歳下なのに潤の扱い方とかチャラい外見とか、私の好きな要素がつまっててありがとうの世界です！潤は、葉山先生より少し色がある感じ…翔く素敵です。いいです。別バージョン楽しみに待ってます (2019年7月1日 2時) (レス) id: 93fa30b886 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：7oh
| 作成日時：2019年6月30日 21時
