そのろく。 ページ6
おもわず後ずさった芽衣の足に何かが当たった。とっさに振り返る。
「ひぃ――っ!」
目に映ったその陰に思わず後ずさった足が絡み合った。
バランスを崩した芽衣はその場に尻餅をつく。
夕陽を背負った人形はうつむいて、恐怖に震える芽衣の目の前で青く目を光らせていた。
ギギギ……
軋んだ音を立て、小刻みに震えながら人形の首が上を向いた。
真っ直ぐ芽衣の目を射抜くと、右足を上げる。
ゆっくりと、人形が歩み寄ってくる。
「あっ……や、やだ……――来ないでぇ!」
叫ぶと同時に立ち上がり、駆け出した。
震える足を必死に動かしながら後ろを振り返る。
夕焼けの赤を背後にした人形は、やぶれたドレスをひきずりながらゆっくりと、しかし確実に距離をつめてくる。
恐怖で足が震えて上手く走れない。
たびたびつまづいて転びそうになるうちにも、人形は芽衣を追いかけてくる。
「来ないで……っ来ないでよお!」
走って走って、ひたすら走り続けた。
どれほどこうしていたのであろうか、気づけば芽衣は踏み入れたことのない森の中を無我夢中で走っていた。
息が切れる、苦しさに頬が紅潮し、疲れた足がこれ以上走れないと悲鳴を上げる。
速度の落ちる芽衣に対して、追ってくる人形はなおも機械的に少しずつ、それでも確実に距離を詰めてくる。
「ハアッ、ハアッ…………あっ!」
ドサッ。
地から浮き出た木の根に足を取られて頭から転倒する芽衣。
擦りむいてジリジリとした熱を持つ肘をすぐに地面に押し付け体を起こした。
振り返る。
人形の姿はもうすぐそこだ。
逃げなければ、そう思うのに足がなにかにしばられたように動かない。
芽衣は地に座りこんだまま後ろに両腕をついて、ただただ恐怖に涙を浮かべガクガクと震えることしかできなかった。
体をガクガクと震わせながら、瞬きをした次の瞬間。
人形の張り付いた微笑が目前に。
「い、……――――いやああああっっ!」
もう終わりだ、そう感じた芽衣は恐怖に堪えきれずにぎゅっと瞼を押し付けた。
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退屈な日常。(プロフ) - 途中で泣いてしまった...っ(´;ω;`) 文才分けてくださ(( (2014年10月1日 18時) (レス) id: 62c9b4f07d (このIDを非表示/違反報告)
8927(プロフ) - 文章力ヤバイですね!思わず引き込まれてしまいました。最後はハッピーエンド(?)でよかったです! (2014年7月2日 22時) (レス) id: 7fc28f0c24 (このIDを非表示/違反報告)
まーさん(プロフ) - ペンタブでしたかっそうですよねっ、ペンタブなら上手な方ですよ!(笑)イラストのうまさでカバーできてますw (2014年6月10日 22時) (レス) id: ae5c5ba8de (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - いおんさん» 絵がうますぎですっ((((;゚Д゚))))神ですねっっヽ(゚∀。)ノ (2014年6月10日 19時) (レス) id: d2f212b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
妙子(プロフ) - お人形がおばあちゃんで守ってくれてたって終わり方が好きです♪素敵なホラーありがとうございます☆ (2014年6月10日 9時) (レス) id: 30085790ce (このIDを非表示/違反報告)
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