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好意は小出しに、そして甘くならないように。
傷心中の彼にとって自身と兄の肯定、やっていることへの称賛は大きな力になることだろう。いたいけな少年の心を甚振っているみたいでいい気分にはならないが、こっちにもあっちの世界での生活がかかってるからね、しょうがないよね。
「Aやさしすぎじゃね？」
ズッと鼻をすすった彼が、グズグズになった目元をハンカチで拭って私からそっと離れた。にへら、と頼りなく笑った彼は等身大のきりやんって感じがして、損得勘定なく助けたくもなった。勿論大義が一番強いから、損切りも得だけで彼を助けることもするが。というわけで、健気な女の振りである、これが一番の有効打だろう。
「私、頑張って舞踏会に行くよ！それで、それから、」
「俺と一緒に逃げて」
「あ、え」
「おねがい」
願ったり叶ったりだなあ！！神演出か！！？？SSR確定演出だよ！ありがとうございました！！！！人間追い詰められたら逃げたくなるもんである。現に私も早くココから逃げ出したいのだから。
計画が段々立てられていく。無謀に見えたそれらも彼の素晴らしい頭脳を持ってすればパズルピースを嵌めていくように完璧な計画が出来た。これにより私がガラスの靴でフラグを作る必要性も、ドレスを着て周囲の目をかっさらう必要もないわけである。一つ仕事が減った！！！！
「もしかしたらAが罪に問われるかもしれない、そんだけヤバいことするから。巻き込んでごめん」
「そんときはそんとき、最悪一緒に死にましょう」
「はあ゛！？……………そんな軽くて良いわけ？」
首を縦に振る。
そんなん最終的にここで死んだとしてもハッピーエンド(こじつけ)にさえたどり着ければ私はあっちで生き残るんだからどうでもいい。
まだ濡れたままの睫毛をしぱしぱと瞬かせてデカい声を出して問いかける彼が面白くて笑った。うそ、本当はことが上手く運ばれすぎて勝利の笑いが溢れただけだ。
からかわれたと思ったのかムスッとした表情で、「次は3日後の夕刻ね」と告げる彼に首肯を返した。
夕焼けに染められた金髪がふわふわ揺れた。
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作者名：ポム | 作成日時：2024年2月25日 1時
