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あれから買い物に行っては、王子と話した廃墟を覗くのが日課になった。居るかどうかも分からない彼を毎日探すのは実に滑稽な話だったが舞踏会無しで彼を惚れさせるには重要な手立てだった。勿論王子は居ない、約束をしたわけでもないし毎日町に降りるなんて許されることではなかっただろう。
今日も買い物に行く。義家族たちは義姉1が聞いた舞踏会の噂に心を踊らせて今から準備を開始していた。どこの情報通の令嬢なんだそれ、私にも情報を分けてくれよ。
そういうわけで機嫌が比較的いい今日ならもっと長い時間探索ができるだろう。馬車無しでの城までの道のりも知りた
「！！、いた」
腕を強く引かれる、裏道に背中を押し付けられて口を塞がれた。しぃー、と一つ指を立てて口を引き結ぶ彼は、紛れもなく王子だった。
あの時より少し窶れた顔には隠してはいるものの薄っすらと隈が見えた。「今から話せたりする？」と伺う彼の声には覇気がなかった。
二人で路地裏を歩く。大きな歩幅をこちらに合わせてくれる彼は優しくて、久々に人の情に触れた気がしてなんだか泣きそうになった。涙腺がもろくなってることを感じると、年だななんて笑えていたけど、単純に疲れてきているだけだと気づき失笑した。
枯れ葉がパラパラと見受けられる廃墟に彼が腰を下ろした。隣に座れと言わんばかりの視線に答えて、私も腰を下ろす。服が汚れるとかは気にしなかった、灰を被っててどうでも良い服だったから。
「兄さんが亡くなったんだ」
ヘビーな切り出しに嫌な予感がする。
彼は眉毛をぎゅっと寄せて話を続けた。
先の戦争で騎士たちが駆り出されたこと。そこに兄も向かったこと。その兄を心の底から尊敬し、いつか彼のために戦略を考え共に生きたかったこと。今も亡くなったことが信じられないこと。
事実を淡々と話す口ぶりではあったが、兄の話をする彼には特別熱が籠もっていた。少し赤みを帯びた目元に、この人いっぱい泣いたんだなと思わされて胸が苦しくなった。月並みだったがそんな感想しか出なかった、むしろ漬け込むチャンスとすら思ってしまった。
彼の背中に手を伸ばす。不敬だとかは最初から気にしてなかった。ぼろぼろになった心を抱えて、それを打ち明ける先が私であることに酷く心が痛んだ。
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作者名：ポム | 作成日時：2024年2月25日 1時
