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庭師がやるような仕事までさせられ、次第にムキムキになっていく身体。お金が勿体ないからと昔から居る従者たちを解雇して私にだけ雑用させるの普通にオツムが心配だわ。
今日も買い物に行かされる。馬車を出せる人間も解雇してしまったために私が歩きで行くのだ。意味がわからない。プラスチックバッグなどという便利アイテムがない中4人分のご飯を作るために買い物に歩きで行くの本当に理解できない。私じゃなきゃ出来ない芸当だぞ？
「〜〜〜〜！」
「〜〜！〜〜〜〜〜〜、おいっ！」
路地から二人の男が立て続けに出てくる。一人はローブを深く被って、もう一人はどう見ても輩だ。
影になった顔から蜂蜜色の瞳が見えた瞬間身体が動いていた。
バクバクと鳴る激しい鼓動、後ろから聞こえる怒声を無視して適当な路地を走り回り廃墟と化したお屋敷の庭に隠れる。
「……助かった、ありがと」
ゼーハーと乱れた呼吸を押さえて軽く頭を下げる彼。頭を上げると同時に瞳とお揃いの金色の髪の毛が顕になった。あの日見たときよりも成長した理知的な顔、意思の強そうな短い眉に、親しみやすさを感じさせる口。
王 子 だ ！ ！ ！
心の中で、ガッツポーズを決める。勝利のファンファーレが頭の中に鳴り響く。
「…………きりやん王子」
「…あー、えと人違いじゃない？」
「いや、無理がありますよ」
「だよなぁ〜！！」
ぐしゃぐしゃと髪の毛を乱しながら頭を抱えて「あ゛ー！」と叫ぶ彼からはあの時の洗練された感じが見受けられない。なるほど、これが庶民に変装するときの王子なんだな？
これからどうやって媚を売っていこうか。
ぶつぶつと何かしらを呟いている王子を尻目に思考する。
魔女なし(推定)で『シンデレラ』の所謂ハッピーエンドを目指すのならば絶対にここで仲良くなっておきたい。あわよくば好きになって欲しい！！！ドレスまではなんとかなっても馬車はどうすることも出来ないだろう。靴だって普通の靴なら他の人間のサイズにも当てはまってしまう。
「王子様はなぜこのような場所へ？」
「きりやんでいいよ、むしろ今は王子とかで呼ばないで」
「きりやんは何でこんな場所に？」
「俺が言った手前あれだけど躊躇ないねキミ」
なりふり構ってられないからね、仕方ないよね。
彼が言葉を紡ごうとして固まって、また紡ごうとするが声が出なかったのか、はくと口だけが動いた。
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作者名：ポム | 作成日時：2024年2月25日 1時
