第17話「懺悔」 ページ19
「今日も一段と酷い顔だな、降谷」
「あかい……」
休憩室に設置された自販機でココアと珈琲を購入し、珈琲を降谷に投げ渡した。難なく缶珈琲をキャッチして小さく礼を言ったものの、缶を両手で包むように持って俯いたままだ
「今日は如何した?」
そう言いつつ、俺は降谷の隣に腰掛けた。ぷしゅっ、と音を立てて缶のプルタブを開け、ココアを喉に流し込む
「_______……今日も、人を殺した」
ぽつり。教会で懺悔するように、神に赦しを請うように、降谷は呟いた
「臓器売買の市場を荒らした、新規バイヤーだった。けどそいつは、普通のサラリーマンの男だった。家族もいたんだ
“僕”はその男を探り屋として追い詰めた。“スコッチ”と“ライ”と、その男を“処分”する為に」
一呼吸、震えだしそうな声で、続けた
「“僕”と“スコッチ”が男を誘導して、最後は“ライ”が仕留めた
“僕”達は男の死体から組織に関わりそうな所持品を回収して、男の死体を、錘と一緒に海に沈めた
“僕”は、殺した
“俺”は、国民を殺した
国民を守る為に、国民を殺した
“俺”のしたことは、正しいのか?“俺”は、為すべきことを果たしたのか?」
そう言って振り返る降谷の顔は酷いものだった。目の下はファンデーションでは隠しきれなかった隈が浮き出ている。目から光が消え失せる。今にも泣き出しそうな、迷子の子供のような表情をしていた
「零、俺を見ろ」
ココアを置き、褐色肌の頬を両手で包み込んで目を合わせた
「お前は正しいよ。誰が何と言おうと、お前は正しい。なぜなら俺がそう思うからだ」
隈を覆うファンデーションを拭うようにそっと親指で目元を撫ぜた
「お前を悪だと言おうとも、俺も緑川も萩原も松田も伊達も、風見や公安の奴等だって、俺達はお前の味方だ。これまでも、これからも、絶対にそれだけは変わらない」
「ほんとか……?」
「嘘だと思うなら聞いて来い。多分殴り飛ばされるぞ」
「返り討ちにするから問題ない」
「そうだな。お前、強いもんな」
「お前に言われたくない」
ぼふん、と降谷は胸に飛び込んで腰に手を回して抱きついてきた
「ねむい」
「今のうちに寝ておけ。起こしてやるから」
「ああ……
ありがとう、A……」
寝落ちたらしく、ゼロの体が一気に脱力した。限界だったらしい
「こっちこそありがとう、零」
柔らかい金色の髪を撫でながら、独り言ちた
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東雲虚 - イラスト上手いですね 続き楽しみにしています(^^) (6月29日 15時) (レス) @page40 id: 21b25aa0ce (このIDを非表示/違反報告)
虹霓(プロフ) - まって、、、ふるかわくん?!?! (2021年9月12日 17時) (レス) id: 84cecb01d0 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - イラストめちゃくちゃうまいですね!尊敬します。 (2020年5月22日 15時) (レス) id: 8c0eb3b580 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - とっても面白いです。これからも頑張ってください! (2020年5月22日 15時) (レス) id: 8c0eb3b580 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 小豆丸さん» 身体は壊さないように…お気をつけて!私も出来れば12月には合格したいです!頑張りましょう! (2018年10月12日 20時) (レス) id: 40d28784a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小豆丸 | 作成日時:2018年5月28日 13時