第16話「お誘い」 ページ18
漸く風邪を治しきって登庁して早速組織の取引現場を押さえた帰り、深夜
誰かと約束したわけでもないが、誰かがいるとそんな予感を抱いて酒場のドアを潜った
古いジャズが微かに流れ、絞られた淡い橙色の照明が照らす窓の無い店内。寡黙なバーテンダーに注文をする。からりと心地良い音がして、黄金に輝く蒸留酒の入ったグラスの中の氷が回った
暫く飲まずにグラスを弄んでいると、来客だ
「久しぶり、いつかのお兄さん。怪我の調子はどうだ?」
「……その顔でお兄さんはやめろ」
至極嫌そうに顔を歪めてそう言った彼は俺の隣に腰掛ける。ぶわりと彼から死の臭いが漂うが、気にせず俺は琥珀色の液体の入ったグラスを呷った
「何も聞かないのか?」
「世の中、知らない方が幸せということもあるだろう。それに、人間秘密の1つや2つある。俺だって踏み込まれたくないと思う領域ぐらいあるからな」
「お前の兄とは大違いだな」
「よく言われることだ」
「そうか」
沈黙が続いた。しかしそれは心地の良い沈黙だった
きっと彼は俺の正体を薄々勘付いている。俺も彼の正体を知っている。しかし言わないのは、この空間を壊したくないからだろう。それほど酷く穏やかで、彼に染み付いた“死の臭い”さえ忘れてしまえたからだ
それからぽつぽつと世間話を軽くしたり酒で喉を潤したりを繰り返すこと数回
「強いな」
「嗜む程度だ。それに、自分の限界くらいは把握している
そういう君も、随分と飲むようだが」
「嗜む程度だ」
からん。氷が硝子に当たり、涼やかな音を立てる
「おい」
「何だ」
短く応えて振り向いた。冷たく鋭い視線が俺を貫いた
「俺と来ないか?」
「残念だが、今の職場で十分満足している」
「そうか、残念だ」
存外あっさりした返答に少し拍子抜けしてしまった
「諦めが早いな」
「また誘うだけだ」
「成程」
琥珀色に浮かぶ氷の塊を突くのをやめて、グラスを呷った
夜はまだ明けない
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お気に入り1216人、評価224票ありがとうございます!orz
ストレス発散する為に作った作品がこんなに評価して貰えてめっちゃびっくりしてます。めっちゃ嬉しいです
ぶっちゃけ名探偵コナンは昔こそ毎日見ていましたが、最近まではそんなに見ておらず、映画を毎年金曜ロード●ョーで見る程度でした
可笑しいと思う点が多々ありますでしょうが、そんなときはそっとコメントで教えて頂けると嬉しいです
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東雲虚 - イラスト上手いですね 続き楽しみにしています(^^) (6月29日 15時) (レス) @page40 id: 21b25aa0ce (このIDを非表示/違反報告)
虹霓(プロフ) - まって、、、ふるかわくん?!?! (2021年9月12日 17時) (レス) id: 84cecb01d0 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - イラストめちゃくちゃうまいですね!尊敬します。 (2020年5月22日 15時) (レス) id: 8c0eb3b580 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - とっても面白いです。これからも頑張ってください! (2020年5月22日 15時) (レス) id: 8c0eb3b580 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 小豆丸さん» 身体は壊さないように…お気をつけて!私も出来れば12月には合格したいです!頑張りましょう! (2018年10月12日 20時) (レス) id: 40d28784a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小豆丸 | 作成日時:2018年5月28日 13時