荒船くん、あのね (ページ6)

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映画の話ページ6

どうしてこうなった

時刻は21時13分、木曜日
おきまり荒船隊の隊室──ではなく、今回は諏訪隊の隊室からお届けしよう

ことの発端は１時間前

いつもの演習を終え
そろそろ帰りの荷物をまとめるかと
隊室に向かっていたその道中

左右に分岐した通路の突き当たり
その右角から
ぴょっこりと顔を覗かせていたのだ

犬の着ぐるみが

無言で踵を返した俺の背中に
しかし
すかさず犬は声をかけてくる

『あーらふーねくーん』

聞き覚えのある声と
視線の圧力

ぎぎぎ、と首だけを回して
声の方に顔を向ける

犬の着ぐるみは
先程となんら変わらない無邪気な微笑みで
じっとこちらを見つめていた

『あーそびーましょー』

こうして訳も分からないまま連行された結果
どうなったかと言うと

「ちくしょう…… ゴミラ…… お前ってやつは…ッッ」
『ゴミラぁぁぁ… あんた良い男だよぉぉ…』

突如連れて来られた諏訪隊の隊室にて
待ち構えていた諏訪さんと
着ぐるみから制服に着替えたAと３人
仲良く並んで某菓子パン戦士の映画を見ることになった

どうしてこうなった

犬の着ぐるみに俵抱きされ
既に泥酔の諏訪さんに「よっ」と出迎えられ
コーラとクッションを押しつけられ
流されるがままソファに座らされ
そろって幼児向けアニメを見ることになった

ダメだ
ますます意味が分からない

そもそもこの映画は誰のチョイスなんだ

「な？？良い話だろォ？」
『さすがは諏訪さんですね！お目が高い！』
「だよなァ！」

まさかの諏訪さんチョイスだった
嘘だろ

テレビ画面の方に視線を戻せば
もう本編は終わっていて
ちょうどエンドロールに差しかかるところだった

固まる俺には目もくれず
諏訪さんとAは大盛り上がりだ

映画の余韻に顔を赤くし
鼻息さえ荒くしながら
ふんふんと熱く語り合っている

「何気に熱い奴が多くて良いよなぁ、このアニメ」
『昨今は幼児向けとて侮れませんね！』

誰も侮ってねえよ

「ぶっちゃけ聞くけどよ、おまえ誰推し？」
『しょくぱんまんですかね、紳士で好きです』
「女子はやっぱそこだよなぁ」

女子高生の会話か
いや、Aは女子高生か

まずい
混乱してきた

頭を抱える俺をよそに
女子高生２人(仮)の会話は止まらない

「前に穂刈にも聞いたんだけどよ
あいつはロールパンナ推しなんだと」
『わかるぅぅ… 刺さる人には刺さりますよね… 性癖…』
「穂刈っぽいよなー」

おい、穂刈
しれっと推してんじゃねえよ

「……ん？」