点と線3 ページ41
無理して一緒にいても仕方ないから、その日は、夜に帰った。
カンタくんはなにも言わなかった。
週明け、人生で初めて仮病を使って会社を休んだ。
家に引きこもってべこべこにへこんだ自分の慰め方を探してみるけど、なにも思い浮かばなくて、ずっとごろごろしていた。
さすがに二日休む勇気はなくて、出社する。
仕事をしていれば、気が紛れてよかった。働くってすごい。
帰りに、お高い紅茶でも買おうと、途中の駅で降りる。
『 あ 』
目に入ってきた光景に呆然とする。
落ち着いたカフェからでてきたのは、カンタくんと、いかにも仕事ができそうな女性だった。
もう、嫌われた?
声が漏れそうになって慌てて口を抑える。
涙が溢れて前がよく見えなかった。
そのまま、後ずさると、だれかに肩を叩かれる。
と「……A?」
としみつくんは、わたしを見るとびっくりして顔を覗き込んだ。
と「どうした?」
声をだすと泣いてしまうから、首を振ってなんでもないって合図を送る。
困って、でも落ち着かせようと、肩をゆっくり撫でてくれる。
苦しい。
カ「Aっ」
と「え?カンタじゃん、」
驚いて、わたしから距離をとったとしみつくんの背に隠れる。
カ「としみつ、っちょっとごめんっAちょうだいっ」
と「は?」
『やっ、』
カ「A!聞いてって!」
カンタくんもわたしも、興奮していた。わたしは逃げたいし、カンタくんはわたしの腕をつかんで引くし。
目を白黒させていたとしみつくんだけど、埒があかないと思ったのか、タクシーを止めてわたしたちを押し込んだ。
カンタくんが、わたしの家の住所を言って、後部座席のシートにどん、って背中をつけた。窓の外には、手を振るとしみつくんが、すこしだけ見えて消えた。
前は、わたしが追いかけたな、って外を見ながら思う。
迷惑ばかりかけて、わたしはほんとうにどうしようもない人間だ、って惨めで消えてしまいたかった。
つづく
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社長室(プロフ) - はるさん» コメントありがとうございます!わたしも二組とも好きですが、うまく表現できているか不安だったので、楽しんでいただけてホントによかったです。さくっと終わりにしてしまいましたがコメントいただけて安心しました、更新まったりがんばります (2018年10月5日 15時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 今回の作品も楽しく読ませていただきました!水溜りボンドも東海オンエアも大好きなのでこの作品は本当に楽しく読ませていただきました。感謝です、、!ひみつも花束も読ませていただいているので、そちらの更新も楽しみにしております。 (2018年10月5日 1時) (レス) id: d20796f27e (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - みづきさん» コメントありがとうございます!ふざけたあとがきのせいでブレましたが、9月から長編またやりますんで、またよかったら見てやってください!コメントいただけると本当に嬉しいです、ありがとうございます! (2018年7月30日 23時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
みづき - 更新お疲れ様でした(^ ^)最高に大好きです!また社長室さんの作品、楽しみにしています! (2018年7月30日 17時) (レス) id: c434ccc1b1 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 菫さん» コメントありがとうございます!嬉しいです〜たのしんでくれている方がいることがやる気に繋がっています(^ ^)夏が終わるころまた新作やりますのでまた覗きにきてください! (2018年7月22日 11時) (レス) id: 599428703d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2018年7月12日 15時