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トミーside
ト「ちょうど今、信用できて家のことしてくれるやつ探してたんだよなー」
『…いやいや、』
ト「給料も出すし、再就職決まったら出て行って構わない。失業手当切れるまででもいい。あ、お前運転できる?」
『…まあ、できますけど』
ト「いいじゃん!…なー、断る理由なくね?」
『……、でも』
不安そうに、カバンの持ち手をきゅうきゅうに握りしめたAが目を泳がせる。Aのことも心配だったけど、カンタがあれからずっと燻っていることも知っている。そこが解消されて、吹っ切れたら、っていうところもある。
ト「じゃあカンタがいいって言ったら?」
『!』
カンタっていう単語に、一気に警戒して半歩分下がったAに苦笑する。
ふつうに、なにがあったんだよ。お前ら。
ト「なに?まだ好きなわけ?」
どんな理由があれ、元カレと一緒に住むのは抵抗があるだろう。カンタは言わずもがな、どうやらAも嫌いで別れたわけじゃなさそうだし。まあ友達に戻るのは、カンタは無理そうだなー。
Aがあの頃より伸びた髪を落ち着きなく触って、ふ、と力を抜く瞬間を見た。
『わかんないんです。…だから無理なんです、もう先輩のことなんか好きじゃないって言えたら、お世話になりたかったです、けど、』
へら、って嘘笑いして、Aはピアスのついた耳を触る。
少しずつ、仮面がはがれてきて気分がいい。とっととそのへたくそな笑顔やめろ。
ト「じゃあどうすんの」
『どうしようもなくなったら……実家、帰ります。最終手段、ですけど。』
苦く笑ったAは、もう無理して笑ってはいなかったけど、本当に困っていて辛そうで。これ以上つつくのはAが可哀想に思えて出来ず。俺も打ち合わせの時間があったから、少し話して別れて。
また違うタクシーを拾って、行き先を言いながら、さてどうすっかな、とカンタとAの顔を思い出して考える。高校の時の二人と、今の二人の、計四人の顔が浮かんでは消える。
ああなんか、夢に見そう。
…。
やだ。超やだ。
相方と相方の元カノが夢に出るの、しんどォ。
つづく
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りい(プロフ) - 個人的に気持ちに余裕がなくて趣味を疎かにしていて、久しぶりに占ツクに来て、まっさきに学パロを拝見しました。社長室さんの小説、やっぱり好きです。素敵な作品を、癒しをありがとうございます! (2019年9月23日 4時) (レス) id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます!素敵な感想、本当に嬉しいです〜ノリノリで描いていったというよりは、すこし苦しみながらできあがっていったので、幸せを感じていただけたことを心から感謝します。ひみつのほうもぼちぼちやっていますのでまた読みにいらしてください〜 (2019年7月27日 22時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ(プロフ) - 完結おめでとうございます!今更ながら、ひみつからきて読ませていただきました。もどかしい青春が詰まっていて、社長室さんの描かれるカンタくんととみなが先輩がたまらなく大好きです。とてつもない幸せに包まれました。ありがとうございます。 (2019年7月26日 11時) (レス) id: 04f6d975f4 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じょん、さん» コメントありがとうございます!学パロで終わらせておけばよかったのに大風呂敷をひろげて2に続きまして、リアルタイムで呼んでくださった方にはご迷惑をおかけしました…!短編のほうは地道にやりますので、またお暇なときにでも覗いてやってください! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 名無し9253号さん» お付き合いくださりありがとうございました! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年6月5日 11時