５ ページ5
ト「カンタには会ってねーの？」
佐藤先輩に無視され会社は潰れ、ウソでしょと笑うこともできず。そんな時、富永先輩に再会した。
全体的に見た目の怖さが増した先輩はそれでも、その時のわたしに安心感を与えてくれて。素直にしんどいと笑っても、当然のように先輩は全く動じなかった。怒られたけど。
『…あー、ついこの間、』
ト「会ったの？」
『このまえ、偶然カフェで会ったんですけど、…普通に知らんぷりされちゃいました、真正面に立ったし、…わたしは、話しかけようとして、』
ト「…そんで？」
『ふい、って顔逸らされて、むこうはお店に入ろうとしてたのに、やめて速足で歩いて行っちゃいました…いやだったんですか、ね、』
思い出したら悲しくなってきて、しょんぼりする。挨拶、くらい、させてほしかった。けど、仕方ない。
ト「…ふーん、別れてから会ったのは、」
『…その一回だけです』
富永先輩は、ふん、と息を吐くとスマホを取り出した。わたしのほうを見ずに俺そろそろ行かなきゃだから、と言ってきょろきょろする。
ト「じゃあ、なんかあったらまず俺に言えよ、俺のラインは残ってんだろ？」
『…あ、佐藤先輩と別れたとき消しました…』
ト「ひど！俺はかんけーねーじゃん！」
おい。って言いながら頭をチョップされて笑う。
あの時は、そうするしかなかった。無意識に小さくため息、
『せんぱいに会ったら、…会いたくなっちゃうと思ったから、』
ト「カンタにな。…ふーん、…LINE変わってないなら後でなんか送る、確認して」
富永先輩は、スマホからわたし、わたしからスマホって順に見て真剣な顔を作る。
『はい、すみません…』
ト「どうしようもなくなったら、絶対連絡しろ、いいな？」
『…はい、』
ト「…(連絡する気ねぇな)」
呆れた顔をした先輩が、タクシーをとめて乗り込んでいくところにありがとうございました、と頭を下げる。
車に乗り込むところ頭下げながら見送ると、そっちのひとだと思われちゃうからやめて。
っていう早口のツッコミに、自然とあはは！って笑っていて、それを見た先輩は、手を振ってドアを閉めた。
すごい。この短い時間で、先輩はわたしを元気にしてくれた。
頑張れるかもしれない。そう思って、とりあえず求人情報誌を購入しにコンビニにむかった。
つづく
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りい(プロフ) - 個人的に気持ちに余裕がなくて趣味を疎かにしていて、久しぶりに占ツクに来て、まっさきに学パロを拝見しました。社長室さんの小説、やっぱり好きです。素敵な作品を、癒しをありがとうございます！ (2019年9月23日 4時) (
レス) id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます！素敵な感想、本当に嬉しいです〜ノリノリで描いていったというよりは、すこし苦しみながらできあがっていったので、幸せを感じていただけたことを心から感謝します。ひみつのほうもぼちぼちやっていますのでまた読みにいらしてください〜 (2019年7月27日 22時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ(プロフ) - 完結おめでとうございます！今更ながら、ひみつからきて読ませていただきました。もどかしい青春が詰まっていて、社長室さんの描かれるカンタくんととみなが先輩がたまらなく大好きです。とてつもない幸せに包まれました。ありがとうございます。 (2019年7月26日 11時) (レス) id: 04f6d975f4 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じょん、さん» コメントありがとうございます！学パロで終わらせておけばよかったのに大風呂敷をひろげて２に続きまして、リアルタイムで呼んでくださった方にはご迷惑をおかけしました…！短編のほうは地道にやりますので、またお暇なときにでも覗いてやってください！ (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 名無し9253号さん» お付き合いくださりありがとうございました！ (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：社長室
| 作成日時：2019年6月5日 11時
